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2年ぶり党首討論 「丁々発止」促す制度に

2021/6/10 6:00

 相変わらず消化不良の印象が残った。持ち時間が短く議論が十分深められなかったり、かみ合わなかったりしたからだ。

 きのう2年ぶりに実施された党首討論である。昨年9月の就任以来初めて臨んだ菅義偉首相に、野党第1党の立憲民主党の枝野幸男代表ら4人が対峙(たいじ)した。新型コロナウイルスの感染防止対策や、深刻な影響を受けた人たちへのてこ入れ策、東京五輪・パラリンピック開催の是非などがテーマになった。

 枝野氏以外の野党3党首は5分ずつの持ち時間しかなかった。議論が尻切れとんぼのまま、討論者が入れ替わって新たなテーマを持ち出したのでは、物足りなさが募る一方だった。

 2000年に導入された党首討論は丁々発止の政策論争が期待されていた。二大政党制を念頭にした政治家同士の真剣勝負は、「言論の府」にふさわしいやりとりも演出してきた。

 ところが、近年は形骸化が目立っていた。もちろん、だからといって党首討論の意義を安易に否定していいわけではない。

 形骸化の背景には、政治家、特に首相の姿勢や力量に問題があるのではないか。今回は、新型コロナの感染リスクが高まると、専門家に指摘されている五輪の開催に関するやりとりから問題点が浮かび上がってきた。

 拡大を防ぐ実効性のある具体策は十分示せないまま。リスクがあるのに、開催するのはなぜか―。重ねて問われたが「国民の命と安全を守るのが私の責務。開催はそれが前提」とピント外れの答えを繰り返した。

 討論に向けて準備を重ねてきたらしい発言を連ねた。しかし国民に納得してもらうつもりがあるようには見えなかった。

 形骸化している背景には、仕組みの問題も大きい。かねて指摘される通り、時間が短すぎて議論が深まらない。野党が数多いせいもあろうが、4党首合わせて45分間というのは、どう考えても短すぎよう。

 持ち時間には首相の発言時間も含まれており、だらだら発言で論戦をはぐらかされるケースもかつては見られた。例えば18年5月の時は、当時の安倍晋三首相が、質問にまともに答えず自分の主張を長々と並べ立て、やじにも反応してたびたび中断するなどで、持ち時間の3分の2近くがなくなった。緊張感のある論戦を期待していた国民には、とんだ肩透かしとなった。抜本的な見直しが求められる。

 では、どうすればいいか。

 まずは時間を増やすことだ。各党首の持ち時間も増え、議論を深める条件は整うのではないか。野党の持ち時間に、首相の発言時間は含めない「片道方式」も有効かもしれない。

 回数を増やすことも必要だ。論戦が中途半端に終わっても、すぐに次を行えば深めることができるかもしれない。外交や少子化対策、地方分権など、重要なテーマを決めて開くこともできよう。そもそも14年には、与野党が月1回の開催を申し合わせていた。しかし守られておらず、その後開催されたのは9回だけ。国民への約束と位置付けて実現を目指すべきだ。

 政治家として、どんな社会を目指すのか、国際社会の将来像をどう描いているのか―。丁々発止の政策論争が繰り広げられるよう、早急に仕組みを整えなければならない。 

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