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大規模接種、なぜガラガラ 予約・移動…80代会場遠く【こちら編集局です】

2021/6/10 23:02
福山市のビッグ・ローズに設置した大規模接種会場。7日はまだ空きが目立った(撮影・井上貴博)

福山市のビッグ・ローズに設置した大規模接種会場。7日はまだ空きが目立った(撮影・井上貴博)

 ▽「早く、幅広く券配布」効果も

 新型コロナウイルスのワクチン接種を待ち望んでいる人は多いはず。ところが、全国的に広まる大規模接種会場の利用が伸びない。広島市が12日に開設する2カ所の予約も低調だ。「なぜ?」「余るなら高齢者以外にも打ってほしい」。編集局には疑問や不満の声が相次ぐ。どうすればいいのだろう。

 平日の昼前、広島市西区のクリニックでは、80代の男女6人が午前の診療が終わるのを待ち構えていた。近所の男性は「気心の知れた先生だし、カルテもある。集団接種で初対面の人に打ってもらうより安心」。初回の接種を終え、ほっとした表情を見せた。

 遠くの集団接種会場より、近所のかかりつけ医を選ぶ高齢者は少なくない。85歳の佐伯区の男性もその一人。運転免許証を返上し、移動が難しいという。予約の電話は混み合うし、ウェブ予約はハードルが高い。「集団接種は私たち高齢者には何かとそぐわんです」と打ち明ける。

 ■「もったいない」

 「もったいない」との声も上がる。「送迎する家族も大きな会場で一緒に打ってくれたらいいのに」とは、福山市の50代の会社員女性。広島市の介護士女性は「日々、緊張しながら訪問介護をしている。空きがあるなら私たちに接種を」と望む。

 大規模接種の多くは、対象を高齢者に絞っている。今はまだ、高齢者にしか接種券を配れていない自治体が多いからだ。一方、政府は21日に始まる大学・職場での接種は「接種券がなくてもいい」としている。自治体でも同じ対応ができないのだろうか。

 「まず無理。混乱が生じる」。広島県内の市町の職員は声をそろえる。接種券には個人の番号が振ってある。いつ、どこで、どのワクチンを打ったのか、システムで管理するためだ。不特定多数の人が集う場で記録があいまいになれば、ワクチンの種類を間違えたり、2度でいいのに3度打ったりしかねない。また接種券を貼った書類がないと、自治体は国に費用を請求できない。

 ならば接種券の配布を早く、幅広くできないのか。実践する自治体もある。広島市と同じ政令市の福岡市は4月、65歳以上に一斉に送った。大規模接種は開始日からほぼ毎日、予約で埋まっているという。「個別接種も人気だが、一人で動ける元気な高齢者は集団に流れている」と担当者。

 県が福山市に設けた会場でも、劇的な変化が起きた。市民の対象が80歳以上に限られていた開設初日の7日、接種した高齢者は88人。急きょ対象にした高齢者施設の職員や保育士を入れても238人と、定員1800人の13%にとどまった。ところが65〜79歳も受け付け始めた10日、予約が殺到。直近の13日は1800人分が高齢者だけで埋まった。

 ■急加速に戸惑い

 ワクチン接種は当初、重症化リスクの高い人から順番に進める方向だった。しかし、ワクチン確保の見通しが立ち、国は接種のスピードアップにかじを切って大規模会場の設置を促す。急なアクセルに市町は戸惑いを隠せない。「計画の前倒しは膨大な作業を伴い、限界がある」との嘆きも聞こえてくる。

 だが大規模会場を設けるからには、ガラガラでは貴重な医療人材の無駄遣いになる。広島市医師会の堂面政俊常任理事は「対象者を広げれば予約は増えるはず。年齢に関係なく打てる体制を整えてほしい」と提言する。(田中美千子、衣川圭)

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