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訪問ヘルパーも優先接種を 介護先から「なぜワクチンを打ってないの」【こちら編集局です】

2021/6/11 21:05
高齢者のトイレ介助をするホームヘルパー(広島市安佐南区)

高齢者のトイレ介助をするホームヘルパー(広島市安佐南区)

 「訪問介護先から『何で新型コロナウイルスのワクチンを打ってこないの?』と聞かれる。早く利用者の不安をなくしたい」。三原市の50代のホームヘルパー女性から編集局に悲痛な声が寄せられた。介護職を巡り国は当初、「高齢者施設」の職員を優先接種の対象とした一方、訪問介護などの「在宅サービス」は除外。その後に在宅系も加える方針転換をしたが、接種を担う自治体の動きは鈍い。女性は自治体に早期の対応を求めている。

 ▽自治体「余裕ない」の声も

 「同じ介護職なのに軽んじられているようで…。やりきれない思い」。女性は複雑な心情を吐露する。1日に高齢者宅を3〜7軒は回り、食事や着替え、トイレなどの世話をする。耳の不自由な人には、マスクを外して大きな声で話さざるを得ないケースもある。

 同じように家に来る看護師はワクチンを接種しており、「ヘルパーとの違いが分からず、なぜ接種しないのかと職場に抗議してきた利用者もいる」と女性。自分が感染すれば事業所全体の運営がストップし、多くの利用者がサービスを受けられなくなる―。そんな不安もよぎる。

 そもそもなぜ、在宅系は当初の優先接種の対象から除外されたのか。「介護施設はクラスター(感染者集団)が発生してもサービスを提供する必要がある。在宅サービスは、事業者を変えるなど別の対応も取れる」。田村憲久厚生労働相は2月の国会答弁で、そう説明している。

 しかし業界側の要望を受けて、同省は3月、各自治体の判断で在宅系も優先接種の対象に加えるよう通知を出した。さらに全国社会福祉協議会などは5月、田村厚労相に対し、各自治体に「強く指導する」ように求める要望書を提出した。

 それでも自治体の対応はなかなか進まない。広島県内の23市町に問い合わせたところ、現時点で在宅系に優先接種をしているのは三次市と神石高原町のみ。東広島、竹原両市や安芸郡4町など優先接種を決めた市町も出始めたが、三原市や広島市など多くは「検討中」にとどまっている。

 どうしてできないのだろう。背景の一つに、高齢者への接種を7月末までに完了させるという政府の目標があるという。県内のある市のワクチン担当者は「7月末までに高齢者を終わらせないと。在宅サービスの方々に目配りする余裕がない」と漏らす。同様の声は多くの市町から聞かれた。

 だが工夫している自治体もある。福山市は今月4日から、高齢者の集団接種会場のキャンセル分をホームヘルパーたちに回し始めた。担当者は「あらかじめ在宅系の事業所にも接種の意思や希望者数を聞き取り、対応できた」とする。

 編集局には、在宅介護を受ける重度の脳性まひの女性(69)=西区=からも声が届いた。「1日に6回はヘルパーに来てもらわないと生活できない。私たちはヘルパーに生かされているんです」

 現在、多くの大規模接種会場はガラガラの状況。職種や年齢などに関係なくワクチンを接種してほしい、との声が強まっている。(千葉教生)

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