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決別 金権政治

法不備、歳費返還に「壁」 「議員特権」司法に問う、弁護士・藤森克美さん(76) 【決別 金権政治】<第8部 制度のほころび>(下)

2021/6/12 22:48
弁護士・藤森克美さん

弁護士・藤森克美さん

 今月4日、静岡市に構える弁護士事務所に東京地裁の判決文が封書で届いた。「本件訴えを却下する」。事実上の門前払いだった。「国会議員だけの特権は許されない」と語気を強める。

 ▽再び返還訴訟

 訴訟の対象は、2019年の参院選広島選挙区の大規模買収事件で有罪が確定し、当選無効となった元参院議員河井案里(47)が受け取った歳費や期末手当など4942万円。逮捕後は国会に一度も出席せず、歳費などを受け取り続けた案里に批判が強まるが、返還させる法の規定はない。業を煮やした広島県内の6人が今年4月、返還請求をするよう国に求めて提訴した。

 同様の訴訟で実績のある藤森。代理人弁護士を務め、地方自治体に違法な支出の返還を求められる住民訴訟を念頭に国会議員の歳費返還も請求できると訴えた。だが東京地裁は口頭弁論すら開かず、「国民が国に違法な公金支出の是正を求められる法律上の規定はない」と退けた。

 当選無効になった議員の給与返還訴訟は2度目となる。前回は、公選法違反(買収)の罪で当選無効となった静岡県焼津市の元市議に全額返還を求めた住民訴訟。原告の弁護士として加わり、一審は敗れたものの、二審の東京高裁が01年に全額返還を命じた。

 返還を命じたのは、元市議が任期開始から辞職までの3カ月間に受け取った123万円。高裁は、当選無効の場合は初めから議員の身分がなく「報酬や期末手当を受け取る根拠はない」と指摘。元市議が受け取った報酬などは不当利得と判断した。最高裁でも判決は維持され、確定した。

 「市民感覚に沿った素晴らしい判決だった」。自ら勝ち取った判例を論拠に、案里の歳費返還訴訟に踏み切ったが、一審は完敗に終わった。ただ、当選無効になった国会議員の歳費を返還させられない法の不備は浮き彫りになった。「だからこそ司法の場で問題提起したかった。心に火が付いた。今回も控訴して最後まで争いたい」

 ▽「最大の聖域」
(ここまで 797文字/記事全文 1241文字)

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  •  2019年夏の参院選で河井克行、案里夫妻が100人に計2901万円を配ったとされる買収事件では、選挙に絡んだお金のやり取りが浮き彫りとなりました。令和の時代も変わらない「金権選挙」。皆さんの地域でも耳にしたこと、目にしたことはありませんか。体験、情報、意見をぜひお寄せください。(中国新聞「決別 金権政治」取材班)

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