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東芝、株主への圧力 政官との癒着、解明せよ

2021/6/16 6:43

 昨年7月の東芝の定時株主総会を巡って、東芝が経済産業省と連携して海外ファンドによる株主の権利行使を妨げようとした―とする外部調査の報告書が明らかになった。「株主総会が公正に運営されたものとはいえない」と結論付けている。

 これに対し梶山弘志経産相は「経産省として当然のことを行っている」「報告書の事実関係に疑問を持たざるを得ない箇所がある」と主張した。独自調査もしないと明言したことは危機感の薄さの表れだろう。こうした対応では済まされない。

 経営再建中の東芝を巡って昨年来、一体何があったのか。

 7月の株主総会で、旧村上ファンド系の筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネージメントなどが独自に社外取締役人事の株主提案を行ったものの、否決された。エフィッシモ社はいわゆる「物言う株主」だ。

 この際の東芝と経産省の動きが問題視されている。報告書によると、両者は連携して株主提案権や議決権の行使を妨げようと画策し、改正外為法に基づく「取り締まり権限」の発動を示唆することなどにより、人事案取り下げを求めたという。

 東芝は原発や防衛装備品、半導体のメーカーであり、政府は安全保障上の理由から、改正外為法を持ち出して海外の「物言う株主」の声を封じようとしたとみられる。だが経営陣にとって都合の悪い株主を排除するのに、安全保障を持ち出すのは筋違いだろう。法は厳格に運用されるべきであり、経産省は内部調査をして説明すべきだ。

 おととい記者会見した永山治取締役会議長(中外製薬名誉会長)も、微妙な発言に終始した。安全保障上の「コア業種」である東芝と経産省との接触に違和感はないが、やりとりは公正さを欠いていたと認めている。東芝前社長の車谷暢昭氏の責任は免れないと断じていて、この点についても経産省が内部調査をしない理由はない。

 外部調査報告の中には菅義偉首相(当時官房長官)の名前が出てくる。車谷氏が菅氏に株主総会の対処方針を相談したと推測している。内容は不明であり、菅氏にも説明を求めたい。

 今回の株主側の外部調査は、3月の臨時株主総会で可決された議案に基づいて強い権限を行使しているという。人工知能(AI)を活用し、電子メールを解析するなど高度な手法も採用している。一つの見地によって立つ弁護士の調査ではあっても軽く見ることはできない。

 東芝のようなコングロマリット(複合企業体)は政官業のもたれ合いによって成長してきたのだろう。2015年の不正会計発覚と歴代3社長の引責辞任から続く混迷は深まるばかりだが、構図は変わっていない。メガバンク出身の車谷氏もまた、株主や世論より専ら政官を取り込もうとした古い体質の経営者だったと言わざるを得ない。

 この問題は東芝にとどまらず、日本の大企業の組織風土を象徴しているとみていい。企業と政官の癒着は日本市場全体の信頼失墜につながりかねない。先進7カ国(G7)の中では最も水準が低い、海外からの対日投資への影響も懸念される。

 東芝の定時株主総会は25日に開かれる。監査委員会などが企業内部で、果たして機能してきたかどうかも問われる。

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