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通常国会閉会 議論封じは許されない

2021/6/17 6:46

 菅義偉首相が初めて臨んだ通常国会が、きのう閉会した。

 収束が見通せない新型コロナウイルス感染への対応や、開催が予定される東京五輪・パラリンピックへの対応をはじめ、山積する課題に議論が尽くされたとはとても言えない。

 会期中、首相は五輪開催の是非や大義、コロナ対策について問われても「まさに安心安全の大会にしたい」「国民の命と安全を守るのは私の責務」などと繰り返すばかりで、まともに答えなかった。

 どう見ても不十分な審議なのに、野党が3カ月の延長を申し入れると、与党は「政府提出法案がほとんど成立している」として要求を拒否した。野党による内閣不信任決議案も、数の力で否決した。

 さまざまな懸念が残る国民投票法の改正や土地利用規制法は可決させ、五輪やコロナ対応などの議論は封じて閉会である。

 結局、政府与党に都合の良い法案だけ通れば、国会に用はないとでも考えているのだろうか。とんでもないことだ。

 国会の役割は法制定だけではない。議員提出法案の審議や行政機関の政策遂行を監視するのも重要な責務のはずである。

 特に今は、コロナ禍で喫緊の課題が山積している。厚生労働省にコロナ対策を助言する専門家組織がきのう開いた会合では、7月23日からの五輪期間中、緊急事態宣言が再度必要になる可能性があるとの試算が示された。こうした科学的なデータや提言などを踏まえ、五輪開催の是非や方法も含めて、議論を深めるべき時である。

 昨年の苦い経験を忘れたのだろうか。野党の要求を退けて閉会したものの、国会が閉じている間に感染が拡大し、対策の遅れが指摘された。不測の事態に迅速に対応するためにも、議論の場を確保しておくべきだ。

 それは何より首相が分かっているはずだ。2011年の通常国会で、東日本大震災の対応を巡って会期延長を渋る当時の民主党政権に対し、無責任だと批判し会期延長を求めていた。当時の国会は会期延長している。

 今回、閉会を急いだのは、追及されたくないことが多いからではないかと疑いたくなる。自民党所属議員が「政治とカネ」の問題で辞職した件や、総務省の違法接待、東芝と経済産業省が一体となって株主提案を妨げようとした疑惑など、まだまだ検証や説明がなされていない問題は数多くある。

 気になるのはこうした国会軽視が、安倍前政権時代から続いていることだ。憲法53条は、衆参両院のいずれか4分の1以上の議員の要求があれば、内閣が臨時国会の召集を決定しなければならないと定めている。

 ところが安倍政権はこうした要求を、2度も無視してきた。17年は3カ月以上も放置した上、ようやく召集された日に首相が冒頭で衆院を解散した。その一方、15年の通常国会では集団的自衛権行使を可能にする安保関連法を成立させるため会期を引き延ばしている。ご都合主義が過ぎるのではないか。

 野党は閉会中審査を求めているが、ここは、臨時国会召集を求めるべきだろう。首相も「安全安心な日常を取り戻す」と言うのなら、五輪やコロナ対策をはじめとする国会での議論から逃げることは許されない。 

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