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河井元法相に実刑判決 カネもらった罪も問え

2021/6/19 7:37

 民主主義の根幹である選挙をカネで踏みにじった。到底許されない犯罪で、厳しい判断が示されるのは当然だろう。

 おととしの参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、公選法違反罪(買収、事前運動)に問われた元法相の河井克行被告に対し、東京地裁がきのう実刑判決を出した。

 自民党の新人候補だった妻の案里氏を当選させるため、広島県内の県議や市町議、首長ら100人に現金を配ったと認定して、4年の求刑に対し、懲役3年を言い渡した。弁護側の求めた執行猶予は付けなかった。弁護側は即日控訴した。

 現職の国会議員夫妻が逮捕されるという前代未聞の事件を起こしたことへの反省は見えない。公判の終盤に見せた謝罪はポーズにすぎなかったのか。

 判決は、克行被告が100人に計2901万円を配ったとして起訴されたうち、100人全員の2871万円分が買収に当たるとし、「極めて悪質」と断じた。後を絶たない「政治とカネ」の問題に国民の怒りは高まっている。視線の厳しさが司法にも伝わっているに違いない。

 河井夫妻がともに所属していた自民党の責任も追及されなければならない。とりわけ、克行被告を法相に任命した当時の首相の安倍晋三氏や、初入閣を後押しした菅義偉首相の責任は重い。事件を反省しているのであれば、実行すべきことは多い。

 まずは金権選挙を断ち切るための政治資金規正法の改正だ。「当選祝い」などの名目での政治家同士の現金授受が容認されており、票の取りまとめを狙った「買収」の抜け道にされかねないからだ。

 政治家が都合良く言い逃れられるよう、線引きをわざと曖昧にしているのではないか。河井夫妻側も公判で当初、現金を渡したことを認めた上で、買収目的でなく、「陣中見舞い」などと主張していた。

 抜け道をふさぐため、政治資金の「財布」は政治家1人につき一つに限定する必要がある。カネの流れを1円から透明化し、全て追跡できるようにする規正法の改正が急務である。

 1億5千万円の問題も残されたままだ。党本部が案里氏の陣営に提供した破格の選挙資金である。落選した当時の現職に渡した額の10倍もの資金の提供を誰が何のために、決めたのか。党総裁だった安倍氏はなぜ、説明を避け続けるのだろう。

 巨費の使い道について、克行被告は「一円たりとも買収資金に使っていない」と法廷で述べた。たとえ手持ち資金から買収の金を出していたとしても、潤沢な資金の提供がなければ、これほど大規模にカネをばらまかなかったとも類推できる。

 1億5千万円の大半は政党交付金、つまり税金だった。党本部は、陣営のカネの流れを全て明らかにして国民に説明しなければならない。事件の背景を解明することで、再発防止にもつながるのではないか。

 カネを受け取った側の責任も忘れてはなるまい。ばらまいた側が罪に問われたのに、責任を問われもせず、居座り続けたままでは不公平極まる。検察は起訴して、司法の場で裁くのが本来の姿だろう。多くが自民党の地方議員であり、辞職を促すなり処分するなり、党としても何らかの対応が求められる。

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