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医療的ケア児 支援を社会の「責務」に

2021/6/21 6:51

 人工呼吸器の装着や、たん吸引などを日常的に必要とする「医療的ケア児」が健やかに学べてこそ、多様性を尊重する社会と言えるのではないか。

 医療的ケア児や家族に対する支援法が今月、成立した。2016年に改正された児童福祉法に医療的ケア児が記載されて5年。超党派の国会議員グループが議員立法としてまとめた。

 国や自治体の対応を児福法は「努力義務」としていたが、支援法は「責務」と明記。罰則や規制はないが、社会全体で適切な対応を取るよう求めている。

 厚生労働省の推計では、対象の子どもは約2万人。この10年間でほぼ倍増しているという。医療の進歩で、病気や障害のある子どもの命が救えるようになったことが背景にある。

 ただ支援体制は十分ではなかった。担い手はほぼ母親。ケアを断られることも多く、全てを犠牲にして、わが子を守らざるを得ないケースも少なくなかった。子どもたちが自ら望む教育を受けられ、ケアする家族の負担が軽減できるよう、支援法の成立を機に、受け皿の整備を急がなければならない。

 必要とされるケアは多岐にわたる。胃に管を入れての栄養補給や人工呼吸器の使用、気管切開部の管理などである。重度の障害が複数あり、在宅で学ぶ子どもがいる一方で、酸素吸入すれば健常児と変わらない学校生活を送れる子どももいる。しかし自治体間では情報把握や意識に大きな差があるのが実情だ。

 山口県は2年前、福祉部門が学校教育部門、市町村と連携して調べ、20歳未満の対象の子どもが150人いることを突き止めた。実態調査もし、たん吸引と経管栄養をほぼ半数が受け、日中を自宅で過ごす子どもが半数であることも分かった。

 一方、広島市は対応するプロジェクトチームを昨年度に立ち上げたが、対象者がどれだけいるかの情報共有も「これから」という。未就学児が福祉部門、就学後は教育部門と窓口が分かれ、組織横断的なチームなのに縦割り行政の弊害を抜け出せていない感が強い。

 現実は過酷だ。山口県の調査では、学校や通所支援事業所など、希望する場所で日中を過ごせないと答えた子どもが4割に上る。「対応できる職員がいないため」が理由の半数を占める。「サービスを提供してくれる事業所がない、少ない、遠い」は6割近かった。3分の1が「医療的ケアが必要なことを理由にサービス利用を断られる」ケースに直面している。

 母親など介護を担う人も同様だ。半数以上が1日6時間に満たない睡眠しか取れず「就労したいが介護のためにできない」人も半数近くになっている。

 子どもたちの命を預かることに、学校や施設が及び腰になるかもしれない。ただ、支援のための医療技術は進歩している。受け入れる側が意識を変え、知識や技能の習得を重ねるよう求めたい。政府や自治体による財政的支援や、必要な人員の確保なども必要になろう。

 教職員たちが行う「医行為」に柔軟に対応する仕組みも不可欠だ。クラスメートにも医療的ケア児との接し方をしっかり教えなければならない。

 支援法の対象は子どもたちに限られている。成人後の支援策の検討も忘れてはなるまい。

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