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夏至の影は短くて…

2021/6/22 6:00

 一年のうち最も夜が長い冬至にはカボチャを食べ、ゆず湯に漬かる。一方、同じ二十四節気なのに、最も昼が長いこの日ならではの風習は、不勉強にして聞いたことがない。きのうの夏至である▲昔から田植えの農繁期に当たり、農家はそれどころではなかったようだ。ほぼ10日後の半夏生(はんげしょう)でひと息つき、豊作祈願のタコを食する地域もあるらしい。なぜかわが家では、7月下旬の夏祭りまでお預けだったけれど▲梅雨の晴れ間が広がったきのう、子どもの頃の遊びも思い出した。影踏み鬼。一年で最も天高く太陽が昇る分、影は短く、鬼から逃げ回るには格好の季節である。影が伸び切って薄れる日暮れまで遊ぶと親から叱られた。「何時だと思ってるの」▲1人置きに座れば隣人の影を踏むこともない―。東京五輪の観客数上限がきのう、会場定員の半分以内で最大1万人と決まった。無観客を検討するよう促してきた専門家の懸念も、いずれは影を潜めると踏んだようだ▲さらに五輪のスポンサーたちは、上限とは別枠の関係者扱いで開会式に入場できるという。夜間のセレモニーでもあり、影というよりはむしろ、商業主義が生んだ「陰の観客」とでも呼びたくなる。

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