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広島市のワクチン接種率なぜ低い 20政令市で比べると…【こちら編集局です】

2021/7/2 23:01

 「広島市はワクチン接種の進み方が遅い」。新型コロナウイルスワクチンの接種を待ち望む人から編集局に連日、こんな声が届く。全国20政令市の接種状況を調べると、広島市は確かに接種率の低さが目立つ。いったいなぜなのか。接種券の配り方、大規模接種会場を開設した時期などの違いが影響しているようだ。

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 6月末までの高齢者向けの1回目の接種率を調べると、広島市の54・2%に対して隣県の岡山市は76・8%。20ポイント以上の差をつけられている。1回目の遅れはおのずと、2回目に響く。広島市は16・8%、岡山市は45・5%だ。

 20政令市には、政府の接種記録システムに入力した回数を聞いた。大阪市は「未集計」と回答。数え方や集計日が違う市もあり、単純比較はできない。それでも広島市と同じ条件の岡山、福岡、川崎、横浜市などは軒並み、初回の接種率が70〜60%台で、広島市は水をあけられた。

 接種率が高い市に共通点を見つけた。接種券を早く、幅広く配っている。岡山、仙台、千葉、福岡市などは、65歳以上に一斉に配布。名古屋市は3度に分けたというが、送付した時期が早い。3月29日から4月22日にかけて、全高齢者への発送を終えたという。

 広島市は5月10日、重症化リスクがより高い80歳以上から始め、その後は5歳ずつ対象を広げた。発送を終えたのは6月21日だ。担当課は「当初はワクチン供給量が少なく、その後の見通しも立たなかった。公平に進め、混乱を避ける必要があった」と説明する。

 確かに一斉に配った市では大混乱が生じた。名古屋市は専用電話100回線がパンクし、役所をじかに訪れる人も相次いだという。「ただワクチン供給量が順調に増え、結果として接種が早く進んだ」と担当者。個別接種より集団接種を先に始め、65歳以上を一斉に受け入れた。各会場の予約が一気に埋まったという。

 大規模接種会場を開いたタイミングも鍵だ。広島、福山市には接種券が行き渡る前に開設され、予約は伸び悩んだ。一時中止した会場もある。一方、仙台市は接種券を65歳以上に一斉に配布。さらに個別接種に先駆け、宮城県や東北大との大規模接種に乗り出した。接種を待ちかねていた高齢者が、どっと押し寄せたという。

 個別接種をメインにしつつ、独自の工夫でスピードを上げた市もある。

 京都市は多くの医療機関の協力を得るため、ワクチン入手の手間を減らした。いつ、どれだけ要るか、端末を3回クリックするだけで、配送センターから確実に届く。福岡市は打ち手を確保するため、医療者への接種を県だけに任せず、市でも進めた。岡山市はクリニックごとの予約の空き状況をウェブで公開している。

 今後は64〜12歳への接種が本格化する。現役世代が打ちやすい環境をいかに整えるか―。接種をせかしてきた政府が一転、ワクチン供給量を絞る動きを見せる中、各市は戸惑いつつもペースアップを図る。広島市も主要駅のそばに会場を新設し、夜間接種も広げる。

 日本大危機管理学部の福田充教授は「自治体はコロナ禍を災害と同レベルの危機事態と捉え、マンパワーと予算を強化し、対策のスピードアップを図る必要がる」と指摘する。危機には不測の事態がつきもの。感染防止の「最大の切り札」とされるワクチン接種をいかに柔軟に臨機応変に進められるか、各市の力が試されている。(田中美千子、衣川圭) 

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