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被害地域、風の条件で変化 広島工業大・田中健路教授(気象学)に聞く【備える 防災最前線】線状降水帯(下)

2021/7/3

 気象予報士と防災士の資格を持つ広島工業大の田中健路教授(気象学)に、線状降水帯の特徴や住民が意識すべき点を聞いた。

 ―線状降水帯とは、どのようなものですか。

 分かりやすく言えば雨が降っている範囲を指し、完全な一直線もあれば、少しカーブを描く形もある。その時の風の吹き方によって変わる。同じ方向からどんどん風が入ってくると、風上側に新しい積乱雲が次々とでき、通過していく。一つ一つの雲は動いていても、同じ場所にできるから止まって見える。そのため同じ場所に雨が降り続く。ここがやっかいだ。

 ―西日本豪雨や広島土砂災害でも発生し、甚大な被害をもたらしました。

 いずれも湿った空気が豊後水道から流れ込み、周南市から岩国市の谷を通って広島湾岸で積乱雲が発達した。広島土砂災害は広島市が中心だったが、西日本豪雨は風や前線の影響で雲が東に移動したため、広島県坂町や呉市に被害を及ぼした。被害を受けやすい場所は、その時の風の条件で変わってくる。

 ―線状降水帯は近年、起こり始めた気象現象なのですか。

 古くから線状降水帯とみられる観測結果はある。例えば1926年9月に広島市中心部で降った大雨。24時間降水量が357・5ミリを観測し、その記録は今も広島地方気象台に広島県の1位として残る。当時の降雨地点を見ると線状に近い。最近広く知られるようになったのは、レーダーで雲の分布が詳しく見えるようになったからだ。

 ―「顕著な大雨に関する気象情報」が提供されるようになりました。意義や注意点は。

 この情報は、雨の現象面から災害への注意を喚起するのが狙いだ。現状では直接、避難行動に役立てるような情報ではない。土砂災害や浸水害の警戒レベル4が出た後に発表されるものであり、「発表されていないから大丈夫」と勘違いされると大変まずい。市町などの避難情報を参考に早めの避難を心掛け、もし情報を取り逃しても命を守れるよう、普段から寝る場所や逃げる手段などを考えておいてほしい。

【備える 防災最前線】線状降水帯
(上)局地的豪雨の発生を速報 22年めど、予報も開始へ
(中)取るべき行動は 小まめに状況確認、早めの避難を
(下)被害地域、風の条件で変化 広島工業大・田中健路教授(気象学)に聞く

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