コラム・連載・特集

ワクチン接種の混乱 調整急ぎ、置き去り防げ

2021/7/4 7:00

 企業や大学を対象とした新型コロナウイルスワクチンの職場接種は、新規申請の受け付けが停止されたままである。

 大企業などの接種が先月21日に本格開始したものの、その2日後に急きょ、受け付けの停止が発表された。申請が殺到したためというが、朝令暮改も甚だしい。政府が甘い需要見通しのまま、スピードを優先したのが原因と言わざるを得ない。

 結果的に、中小企業の多くは置き去りにされた格好だ。振り回された職場に混乱が広がり、会場の予約キャンセル料といった損害も懸念される。

 自治体へのワクチン供給も滞り始めた。新規予約を停止する自治体が続出している。

 ワクチンの確保量をチェックした上で、接種を円滑に進める態勢の再構築が必要だ。不公平が広がらぬよう、スピード第一の姿勢を改めねばなるまい。

 全国の企業・大学から申請があった接種件数は、約5200会場で1850万人分という。うち800万人分は未承認で、河野太郎行政改革担当相も8月9日以降になるとの見込みを示すにとどまっている。

 菅義偉政権はワクチン接種をコロナ対策の切り札とする。加速化に向け、始めたのが職場接種だ。同一会場で最低千人程度に2回打つことが基本。実施要件にすぐ対応できる都市部の大企業は先行し、接種も進む。

 一方、国内企業の大半を占める中小の業者は、要件を満たすために地元の業界ぐるみでの申請準備や、ワクチンの打ち手となる医師らの確保に追われた。

 医師や会場をやっと確保しながら、申請が間に合わなかったり承認されなかったりした企業も少なくあるまい。取り残された上、手間やコストが無駄になった中小企業に、政府はどう対応するつもりだろう。

 1日100万回―。菅首相の掲げた目標に沿い、「とにかく数をこなす」意識で計画は進んだという。年齢による優先基準を不要とし、基礎疾患のある人も、ない人も同時並行で打ってよいなどと方針変更もした。

 先月8日に受け付けを開始するや、想定を上回る申請が殺到した。使用する米モデルナ製ワクチンの輸入ペースが追いつかぬほどになり、受け付けを早々と停止。制度設計のずさんさを露呈し、あおりで中小企業は取り残されたのである。

 都道府県の大規模接種会場に向けるワクチンを米ファイザー製に切り替え、余りのモデルナ製を職場接種に回すという。

 政府の対応は、あまりにも場当たり的に過ぎる。

 ファイザー製を使ってきた市区町村の個別・集団接種に、十分な量が届かなくなっている。神戸市は供給量が大幅に不足するため、新規予約の受け付けを停止。予約済みの5万人分の接種もキャンセルするという。

 供給が滞る中、大阪府の吉村洋文知事は接種重点地域として大都市圏に優先供給するよう、政府に要望した。この春、医療崩壊に近い状況に陥ったこともあり、危機感を募らせたのかもしれない。だが大都市優先の要求に理解が広がるだろうか。

 政府は一刻も早く、ワクチンの配分先を再調整するなど、制度設計を立て直すべきである。企業の規模や人口の多少で、接種を希望しながら取り残される人があってはならない。 

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

社説の最新記事
一覧


 あなたにおすすめの記事