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「家の近くに盛り土が…」熱海土石流で不安の声 安全性は?【こちら編集局です】

2021/7/7 22:52
建設残土処分場の土砂が豪雨で崩れ、2人が死傷した東広島市志和町の現場(2009年7月25日)

建設残土処分場の土砂が豪雨で崩れ、2人が死傷した東広島市志和町の現場(2009年7月25日)

 「家の近くに盛り土がある。安全なのでしょうか」。編集局に不安の声が相次いで寄せられた。静岡県熱海市で3日に発生した土石流は、山中の建設残土による盛り土が崩れ、被害の拡大を招いたとみられている。だがすべての盛り土が危険というわけではなく、大規模な住宅開発用地などは行政が土砂崩れ対策を確認しているという。盛り土を巡る規制について調べてみた。

 まずは「住宅開発」のための盛り土の場合、土砂災害の恐れがあるエリアは宅地造成等規制法により、都道府県などによる工事の許可や終了後の検査が必要だ。排水設備を設けるなどの土砂崩れの対策があるかどうかチェックしており、広島県都市環境整備課は「県などが許可を出し、検査した箇所の安全性は確保している」とする。

 盛り土面積3千平方メートル以上などの場合は「大規模盛り土造成地」で県内に1283カ所。一方で危険箇所にある3千平方メートル未満の盛り土造成地の数は把握できておらず県は今後調べる。

 熱海市の土石流では住宅地の上部にあった盛り土が問題視されている。巻き込まれた住宅地は、土砂災害防止法による土砂災害警戒区域(イエローゾーン)。広島県は県内の同区域1万6866カ所の上部についても、盛り土の有無を調べる方針だ。

 では「住宅開発以外」の目的の場合はどうか。多くの自治体は条例を設けている。広島県では県土砂適正処理条例がそれに当たる。同条例では2千平方メートル以上を埋め立てる場合、県や市町の許可が必要。県や市町は盛り土の傾斜や排水設備などを確認し、工事中も立ち入り調査をしている。

 ただ実態の把握が難しいのは、許可対象外の2千平方メートル未満の開発だという。

 実際、東広島市志和町では2009年7月、約1900平方メートルの残土処分場で土砂崩れが起き、2人が死傷する事故が起きた。

 県は09年の事故を受け、2千平方メートル未満でも工事に問題があれば業者に是正を求められるよう条例の運用を変えた。しかし問題の把握は住民らの「通報頼み」なのが実情だ。

 独自に規制を強めた自治体もある。広島市は04年、500〜2千平方メートルまたは体積500立方メートル以上を埋め立てる場合を許可制とした。東広島市は09年の事故を受け、500〜2千平方メートルも許可制に。さらに17年からは現場を埋め立てる際、業者に地元説明を義務付けた。ただ、こうした対応はまちまちで自治体任せというのが実情だ。

 広島大防災・減災研究センターの海堀正博センター長(砂防学)は「盛り土の規模にかかわらず、コンクリートでの補強や排水機能を調べることが大切」と指摘。同センターの土田孝特任教授(地盤工学)は「宅地の上流の地形の改変はしっかり監視する必要がある。国による一元的な法規制が要る」と強調する。(坂本顕、高本友子)

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