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警察庁のサイバー局創設 国際連携強め攻撃防げ

2021/7/30 6:00

 サイバー犯罪・攻撃の拡大に歯止めがかからない。先週発表された2021年版警察白書によると、昨年の摘発件数は9875件に上り、過去最多となった。件数が増えただけでなく、巧妙化・深刻化している。近年は中国やロシア、北朝鮮など国家レベルの関与が疑われる大規模攻撃が相次いでいるという。

 もちろん、警察庁も手をこまねいているわけではない。来年度、司令塔役を置く大幅な組織改革で対応を本格化させる。

 行政機関や重要インフラへの攻撃といった重大事件に対抗するため、生活安全局や警備局などから関連業務を移し、サイバー局を創設する。電子マネー決済サービスを悪用した預金の不正引き出しなど全国で同時多発的に起きる事件も担当する。

 被害者は誰かなどによって担当が分かれていたのを集約すれば、従来の「縦割り」の弊害をなくせそうだ。

 加えて、実動部隊を関東管区警察局(さいたま市)内に発足させる。全国の警察から集めた200人程度の捜査員によるサイバー直轄隊(仮称)である。警察法改正で、サイバー局は22年4月、直轄隊は23年3月末までの始動を目指すという。

 皇族の護衛や警戒に当たる皇宮警察本部を除き、国が直接捜査を担うのは、1954年の警察庁設置以来初めて。従来は警察庁は警察行政に特化し、捜査は都道府県警察が担ってきた。歴史的転換と言えよう。

 欧米各国でも、重大なサイバー事件の捜査は、国の機関が担当している。米国の連邦捜査局(FBI)やドイツの連邦刑事庁などである。政府挙げての対策は世界の流れなのだろう。

 というのもサイバー犯罪・攻撃には国境がないからだ。サイバー局創設を機に、各国の捜査機関と信頼関係を築いて国際的連携を深め、社会インフラや国民を守らなければならない。

 海外では最近十数年、国家の関与が疑われる大規模攻撃が目立つ。エストニアの政府や銀行のシステムが一時使えなくなったり、フランスのテレビ局が放送できなくなったりした。

 先週は、中国がハッカーを雇い他国にサイバー攻撃を仕掛けているなどとして、非難する声明を米国や英国、欧州連合(EU)が一斉に発表した。

 中には、機密データを人質に取って身代金を要求するウイルス「ランサムウエア」を使った事例もあるそうだ。日本も宇宙航空研究開発機構(JAXA)など研究機関や企業が標的とされた。見過ごせない。

 ただ、日本には一元化された実務組織がなく、情報が共有されないなど、欧米に比べ十分な体制が整っていなかった。

 憲法や電気通信事業法で保護された「通信の秘密」という厚い壁もある。他国より厳格で、欧米のような踏み込んだ捜査は違法となりかねない。攻撃の事前察知や攻撃者特定のため、どこまでは認めるのか。個人の自由に関わるだけに慎重な議論が必要だ。その上で、法律できちんと定めねばならない。

 政府から独立したチェック機関を設けたり、捜査記録を文書に残すよう義務付けて行き過ぎがなかったか、確認できるようにしたり…。そうすれば、捜査機関による「乱用」の歯止めとなろう。国民の理解が得られる仕組み作りが求められる。

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