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国の予算と財政規律 コロナ対策、精査怠るな

2021/8/1 6:46

 2020年度に使い切れず、次年度に繰り越した国の一般会計予算額が30兆7804億円に上ると、財務省がおととい発表した。過去最大だった東日本大震災後の4倍を超す巨額だ。

 コロナ禍は、どの国も経験したことのない非常事態である。試行錯誤の予算対応となったのは仕方ない面もあろう。

 だとしても、コロナ対応の予算編成は来年度で3年目になる。いつまでも財布の底が抜けたような対応ではまずい。各省庁が8月中にまとめる概算要求に対し、実効性や優先度の精査が欠かせない。菅義偉政権の財政運営の真価が問われる。

 コロナ禍が深刻化し、20年度の一般会計予算は3度の補正で、当初から73兆円増の総額175兆円にまで膨らんだ。21年度も、当初の段階ですでに106兆円を超えている。

 コロナ禍に苦しむ企業や国民を支える事業に予算を割くのは当然だ。だが財源となる税収は、過去最高の20年度でも60兆円にとどまる。歳出が歳入を大幅に上回る状況が長引くことは決して好ましくない。

 30兆円に上る予算の繰り越しについて、麻生太郎財務相は「使い残したわけではない。繰り越した目的に沿って着実に執行していく」とする。

 30兆円のうち最多の6兆4千億円は、企業の資金繰りを支援する実質無利子・無担保融資だった。融資が間に合わず、既に倒産した企業もあるのではないか。繰越額1兆3千億円の観光支援事業「GO TO トラベル」は感染拡大を助長するとの批判から、停止状態が続く。

 執行のタイミングを逸したものは他にもあるだろう。不用になった予算は固執せずに残すか、別事業に振り替える柔軟な対応も検討すべきだ。

 来年度の予算編成で、政府は9年続けて歳出の上限設定を見送った。先行き不透明だとして、今回もコロナ対策の額を示さないことにした。事業をただ積み上げるだけでは予算が膨張し、財政規律を揺るがす。

 さらに気掛かりなのは、与党内から30兆円規模の経済対策を望む声が出ていることだ。数字ありきで、具体的に何が必要かという議論が後回しになっている。これまでの対策を検証せず、実効性を高める手だても見えぬままでは、この秋の総選挙に向けた「ばらまき」と受け取られても仕方あるまい。

 財政健全化の目安である基礎的財政収支への対応も理解に苦しむ。25年度の黒字化目標の達成が危ぶまれる中、菅首相はその実現に含みを残す。先日の経済財政諮問会議でも、成長を実現し、歳出改革を続けることで達成可能と強調した。

 だが、その達成には国内総生産の実質2%、名目3%以上の成長が前提となる。この10年間で1度しか達成できていない数字だけに、現実を踏まえた議論というには程遠い。

 仮に成長が実質1%にとどまれば、30年度でも基礎的財政収支は6兆円の赤字となる。コロナ禍での税収減など、数字が下振れする要素もある。菅首相の発言は楽観が過ぎないか。

 予算編成は、政権の最大の仕事に他ならない。財政運営に失敗すれば、そのツケを将来世代に回してしまう。かじ取り役の菅首相は、責任の重さをもっと自覚すべきである。 

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