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皇位継承の方策 抜本策の議論避けるな

2021/8/2 6:00

 今後の皇族のあり方を議論する政府の有識者会議が、皇位継承を巡る方策の方向性について中間整理をまとめた。

 皇族の減少対策を優先課題として、女性皇族が結婚後も皇室に残る案と、旧皇族の男系男子を養子に迎える案を中心に検討する方針を打ち出した。その一方で、女性・女系に皇位継承資格を広げるかどうかは将来的な課題として棚上げした。

 皇族数を確保するだけでは、皇位の安定継承にはつながらない。憲法が定めた象徴天皇制の存続に関わる喫緊の課題だ。国会での議論を通して国民の理解を深め、皇位継承の抜本策も早期に結論を出す必要がある。

 皇位継承の議論は2017年6月、上皇さまの天皇退位を認める特例法が成立したことがきっかけになった。国会は付帯決議で、政府に対し「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」や「女性宮家の創設」などを速やかに検討し、報告するよう求めた。

 ところが、政府は長らく検討を先送りしてきた。昨年11月まで続いた皇位継承儀式や、新型コロナウイルス禍への対応を理由に挙げるが、女性・女系天皇や女性宮家に強く反対する自民党保守派に配慮せざるを得なかったのが実情だろう。

 保守層を支持層に持つ安倍晋三前首相はもちろん、後を継いだ菅義偉首相も皇位継承策の検討には消極的で、踏み込んだ議論に二の足を踏んでいる。今秋までに迫った次期衆院選での争点化を避けたい思惑も透ける。

 ようやく今年3月に有識者会議が発足した。4月以降、5回のヒアリングを実施し、皇室や法律の専門家、小説家ら21人を招き、天皇の役割などについて見解を尋ねたものの、女性・女系天皇については賛否が割れた。女性天皇は容認しても、母方で天皇とつながる女系天皇には反対という人もいた。

 あらためて意見集約の難しさが浮き彫りになった。有識者会議は皇位継承権の範囲については「次のステップとして考える課題」とし、言及を避けた。

 さらに中間整理では「次世代の皇位継承者がいる中で、大きな仕組みの変更は十分慎重でなければならない」と強調した。

 皇室典範は、父方で天皇とつながる男系男子に皇位継承資格を限る。16人の皇族のうち、皇位継承資格を持つのは、秋篠宮さまと秋篠宮家の長男・悠仁さま、そして上皇さまの弟の常陸宮さまの3人だ。

 悠仁さまの世代まで継承者がいるにもかかわらず、女性・女系天皇を容認する案を示せば、国論を二分する恐れもある。そんな理由で有識者会議は、深入りしない道を選んだのだろう。

 政権内には、女性・女系への継承権の拡大は「悠仁さまに男子が生まれるかどうかが見極められる数十年後の課題」との声もあるという。あまりにも危機感に乏しく、無責任と言わざるを得ない。

 将来にわたる安定的な皇位継承には、女性・女系天皇を認めるかどうかの議論は避けられない。これ以上先送りすれば、女性皇族が結婚して皇室を離れていく可能性もあり、残された時間は少ない。

 政府は皇位継承の議論と正面から向き合い、国民の共感と納得を得られる打開策を示す必要がある。

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