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緑の都市インフラ

2021/8/13 6:31

 賢治の詩の一節は樹木にも当てはまる。雨ニモマケズ/風ニモマケズ/雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ…。ことに街路樹の姿は涙ぐましい。枝葉を伸ばせば電線の邪魔だと疎まれ、狭苦しい歩道の隅で何とか踏ん張っている▲それなのに校則違反の頭髪みたいに枝は刈り込まれて「こぶ」だらけ、根回りの土を肥やす落ち葉も厄介払い。大田市出身の樹木医、岩谷美苗(みなえ)さんは著書でこう案じる。「街の木が、とても理不尽な目にあっている」▲人と街路樹とが通い合わせてきた、キモチが離れかけているのかもしれない。そんな在り方が今、問い直されているという。街路樹を「緑のインフラ」と見立てる動きである▲先週出版された岩波ブックレット「街路樹は問いかける」では、先を行く海外の潮流を取り上げている。総じて重きを置かれる物差しは、枝葉でどれだけ広い地面が覆われ、日差しを遮れているか。舗道や空調でこもる熱は温暖化と相まって、都市生活をさいなむ。植樹帯が広ければ雨も吸い、水害を和らげる▲木の立場では「のびのび、放っておかれるのが一番」と岩谷さんは説く。多様性や個性に目を向けだした教育論にも聞こえてくるから不思議である。

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