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終戦から76年 過ちを繰り返さぬ行動を

2021/8/17 7:03

 終戦から76年、全国戦没者追悼式がおととい営まれた。戦後生まれが人口の8割を超え、戦禍の記憶をどう受け継いでいくか、ハードルは年々高くなっている。それでも、約230万人の軍人・軍属と、広島、長崎の原爆被害者を含む民間人約80万人の死者を出した過ちを繰り返すわけにはいかない。

 私たち一人一人が歴史に学び、教訓を得る必要がある。その上で、不戦の誓いを改めて胸に刻まなければならない。

 追悼式は、新型コロナウイルス禍で2年続けて規模が縮小され、中国地方の5県を含む22府県の遺族が欠席するなど、過去最も少ない参列者となった。

 首相の式辞では今年もアジア諸国への加害や反省への言及はなかった。安倍晋三氏が首相に返り咲いて以降、9年連続となった。菅義偉氏が首相になった今回は、元に戻す好機だった。「植民地支配と侵略への反省とおわび」を明記した戦後50年の村山談話を菅内閣として継承しているからだ。しかし式辞の中身は昨年とほぼ同じだった。

 今年は、日本軍が米ハワイの真珠湾を奇襲して80年になる。その10年前には、満州事変を起こしている。関東軍が謀略を仕掛けて中国東北部を占領し、後の日中戦争につながった。

 日本による植民地支配や侵略などもあって、アジア諸国の犠牲者は2千万人を超すという。にもかかわらず、首相の式辞は、そうした責任に正面から向き合おうとしなかった。

 天皇陛下はお言葉で「過去を顧み、深い反省の上に立って…」と述べた。戦後70年に上皇さまが使い始めた「深い反省」を踏襲、アジアの犠牲者も視野に入れている証しなのだろう。

 式辞との差が際立つ。これでは、菅政権が戦争責任を真剣に反省しているか、他国から疑問を持たれても仕方あるまい。

 昨年に続き、閣僚の靖国神社参拝が相次いだことも、疑念を深めたのではないか。「自国のために犠牲となられた先人」などと弁明している。しかし戦争責任があるとして裁かれたA級戦犯が合祀(ごうし)されている。

 政府は、国立追悼施設の新設なども検討したが、進んでいない。抜本的な対策を長年怠ってきた責任は重い。

 日本とドイツの戦後処理に詳しい識者からは、自らの戦争責任に向き合う姿勢が違うとの指摘もある。ドイツは1960〜70年代に自らの戦争犯罪を追及した。しかし日本は十分ではなかった、というのだ。それが、戦後76年もたつのに周辺諸国から信頼が得られないことの背景にあるのではないか。

 戦争責任から逃げようとする政府の姿勢は、自国の空襲被害者に対しても見られる。補償法案を超党派の議連が昨年秋にまとめたが、国会に提出できなかった。立ちふさがったのは自民党だった。幹事長は了解したが、下村博文政調会長の反対で提出断念に追い込まれた。

 軍人・軍属への補償は累積で60兆円に上るのに比べ、差は甚だしい。同じ第2次世界大戦の敗戦国ドイツやイタリアは民間人被害者への補償もしている。

 加害と被害について自ら調査し、その反省を踏まえて、補償や、記憶の継承に取り組む―。戦争の惨禍を繰り返さないため、政府に求められているのは、そうした行動である。 

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