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介護職員不足 抜本的な待遇改善図れ

2021/9/6 6:49

 厚生労働省は、高齢者がピークの3900万人超となる2040年度に、介護サービス事業所などで働く職員が全国で約280万人必要になるとの推計を公表した。

 19年度の約211万人から約69万人という大幅な上乗せが求められる。単純計算で、毎年3万3千人ずつ増やしていかなければならない。

 これほどの人材を確保するのは容易ではなかろう。このままでは、将来にわたって介護サービスを維持することができなくなる可能性もある。介護保険制度があっても、必要とする人がサービスを受けられないという危機的な状況に陥りかねない。

 「介護難民」が社会にあふれるような事態は避けなければならない。政府は強い危機感を持って、介護分野の人材確保に向けた対策の強化に取り組む必要がある。

 都道府県がまとめた介護サービスの規模や利用見込みなどから算出した。40年度の推計は初めてとなる。

 大都市圏での不足が深刻である。職員の増加ペースが現状のままだと、最も多い東京で40年度に約7万2千人が足りなくなる。次いで大阪が約6万7千人、神奈川が約4万6千人不足すると試算されている。

 広島は約1万1千人、山口は約2700人、岡山は約4100人が不足する見通しだ。

 人の命と健康に関わる仕事で精神的な負担も大きい。勤務時間が不規則な上、重労働も多い。新型コロナウイルスの感染対策で、労働環境はさらに厳しくなっている。

 人手が足りない現場では、職員1人当たりの負担が重くなり、さらなる離職を招く悪循環が生じやすい。担い手の確保はもちろん、定着も大きな課題になっている。

 担い手不足の解消に向けては、何より賃金を中心にした待遇改善が欠かせない。

 政府は他産業と遜色ない賃金水準を目指し、介護報酬の改定などを通じて、この10年余で月額平均7万5千円の改善を図ってきたという。それでも仕事の重要性に見合った水準まで引き上げられたとは言い難い。

 労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン」の調査では、月給で務める介護職員の19年の平均年収は約360万円で、全産業の平均より100万円以上低かった。

 より踏み込んだ待遇改善が欠かせないが、介護報酬の引き上げは、介護保険料や利用者が支払う自己負担の増加につながってしまう。

 65歳以上が支払う介護保険料の全国平均は21年度に初めて6千円を超え、制度が始まった00年度の2倍以上になっている。負担増を背負いきれない高齢者もいる。介護報酬の引き上げだけでは限界がある。

 抜本的に待遇改善を図るには、保険料を支払う年齢を現在の40歳から引き下げることや、介護報酬とは別枠で公費を投入する仕組みを検討する必要があるのではないか。

 働きやすい環境づくりも重要だ。移動や見守りなどを補助するロボットや情報通信技術(ICT)を活用し、介助の負担軽減や事務業務の効率化も進めたい。介護事業所も、育児との両立支援など柔軟な働き方を積極的に導入すべきだ。 

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