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秋元衆院議員に実刑 IR事業は白紙に戻せ

2021/9/8 6:47

 特定の業者から現金をもらった上、丸抱えの旅行でもてなされていた。癒着が明るみに出ると、あろうことか、うその証言をするよう知人を使って働き掛けていた。そんな人物が衆院議員というのだから、どこまで劣化が進んでいるのか。

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件で、収賄罪と組織犯罪処罰法違反(証人等買収)罪に問われた衆院議員の秋元司被告である。きのう東京地裁から懲役4年(求刑5年)の実刑判決を言い渡された。

 起訴された二つの罪のどちらも秋元被告は無罪を主張し、全面的に争っていた。しかしいずれも判決で厳しく断罪された。

 収賄罪について判決は、秋元被告がIR担当の内閣府副大臣を務めていた時、贈賄側から計758万円相当の賄賂をもらった事実を認めた。その上で「至れり尽くせりの特別待遇で特定の企業と癒着し、社会の信頼を大きく損なった」と指摘した。

 さらに証人等買収罪については「前代未聞の司法妨害」と非難した。知人と共謀して贈賄側に虚偽の証言を依頼し、報酬として現金の提供などを持ち掛けたというから悪質極まりない。

 「公人としての倫理観が欠如しており、最低限の順法精神もない」。判決が容赦なく切り捨てたのも当然ではないか。

 ただ厳しい判決は予想通りだった。一連の事件で、贈賄側や証人買収の実行役ら計8人の有罪が既に確定していたからだ。

 秋元被告には今まで全く反省の色は見られなかった。逮捕直前に自民党を離党したものの、衆院議員は辞めていない。判決前日には、どんな判決が出ても次の衆院選に立候補すると取材に答えていた。

 本人だけの問題ではなかろう。自民党は、離党を受け入れただけで何らおとがめなし。保釈後、所属する二階派の会合への出席も認めていたという。野党が求めた国会での証人喚問にも応じてこなかった。あきれるほど自浄能力に欠ける。

 判決を受けて、自民党の森山裕国対委員長は「極めて大きな問題だ」としながら、「国会議員一人一人が自覚して政治活動に取り組むことが大事だ」と述べるにとどまった。

 政権与党として副大臣に起用した責任は感じていないのか。汚職事件の根っこにはカジノを巡る利権がある。一議員の不始末では片付けられない。与党は辞職を求める必要がある。

 IR事業そのものも、見直しが迫られている。有力候補地の横浜市で、先月あった市長選で、市民の多くはIR推進に明確な「ノー」を突き付けた。国内全体でも、ギャンブル依存症の増加や生活環境悪化への懸念から根強い反対がある。

 加えて、昨年来の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で、カジノ客として見込んでいた海外客が大幅に減少した。いつになれば、回復するのか、全く見通せない。

 IR事業参入を目指していた海外の大手カジノ業者もコロナで打撃を受けている。各国での営業が苦境に陥るなど、日本進出計画の見直しに追い込まれるところも出ているようだ。

 IR事業は日本に不可欠なのか。国民の理解は得られるのか。判決を機に、いったん白紙に戻して考え直すべきである。 

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