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過去最大の概算要求 安易な膨張、容認できぬ

2021/9/9 6:47

 2022年度の予算編成に向けた各省庁の概算要求が出そろった。一般会計の要求総額は111兆6559億円となり、4年続けて過去最大を更新した。

 新型コロナウイルス禍や加速する高齢化への対応で要求額が膨らんだという。税収不足を補うための借金の返済に充てる費用などもかさんだ。

 収束の見えないコロナ禍を理由に、予算額を未定とした「事項要求」も目立っている。実際の予算規模は拡大する可能性がある。さらに菅義偉首相の突然の退陣表明によって予算編成の見通しも不透明になっている。

 コロナ禍にあって感染対策や経済対策などに予算を割くのは当然だ。しかし財政は先進国の中で最悪の状況にある。歳入の4割を国債発行の借金に依存している現状を踏まえれば、歯止めのない安易な予算の膨張は容認できない。

 政府は昨年来、コロナ対策のために大規模な財政出動を繰り返してきたが、医療の逼迫(ひっぱく)は解消されず、中小企業や個人事業主、非正規労働者の苦境は続いている。

 予算を積み上げても有効に執行できなければ、無駄遣いと言わざるを得ない。大切なのは規模ではなく、その中身だ。後を継ぐ新首相は、財政運営を根幹から見直し、できる限り予算の効率化に努める必要がある。

 歳出の3分の1を占める社会保障費が膨らみ、厚生労働省の要求額は過去最大の33兆9千億円となった。22年度は団塊の世代が75歳以上になり始め、高齢化に伴う医療や介護など社会保障関係費が21年度に比べ6600億円増えるとした。

 国債の償還や利払いに充てる国債費は過去最大の30兆2千億円を見込む。21年度より3割近く増え、過去最大を更新した。

 今回の概算要求では、2年ぶりに特別枠が復活した。菅首相が重視するデジタル化、脱炭素化、地方創生、子育て支援について配分を重点化する。今後の編成でも「削られにくい」との思惑もあり、各省庁がこぞって要求を積み増し、総額は計4兆円超となっている。

 ただ特別枠は、過去の例などから効果は限定的とされ、既存事業の看板を掛け替えただけの施策を紛れ込ませる温床となりがちだ。本当に政策効果のある事業なのか、財務省は厳しく査定する必要がある。

 政府は、追加経済対策をまとめる方針だ。見過ごせないのは、具体的な概要も決まっていないのに、自民党内からは「数十兆円規模」の大型対策を求める声が相次いでいることだ。

 迫る衆院選に向けて、規模を求める圧力はさらに強まるだろう。選挙目当ての予算のばらまきは認められない。

 20年度は3度の補正予算を追加した結果、一般会計の歳出が過去最大の175兆円に膨らんだ。だが、そのうち30兆円が使い切れず、繰り越した。公共事業や観光振興策「Go To トラベル」など、コロナ対策とは直接関係ないものや感染が収束するまでは支出できない事業が目立っていた。

 コロナ禍で苦しむ人たちへの支援はまだ必要で、無駄遣いをする余裕はない。予算編成に当たっては実効性や優先度を厳しく精査し、真に必要な事業を見極めなければならない。新首相の財政運営の真価が問われる。


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