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障害児手当 支給実態の格差なくせ

2021/9/15 6:57

 20歳未満の障害児を育てる家庭が受け取れる「特別児童扶養手当」が、地域によって支給実態に大きな差があることが明らかになった。国が定めた審査の基準があいまいで、実際に可否を決める都道府県や政令市の判断にばらつきが出ている。

 障害児手当は、身体障害や知的障害のある児童の保護者の負担を補う。障害が最も重い場合は月5万2500円、最も軽い場合で3万4970円が支給される。所得制限はあるが、全国で24万人が受給している。

 障害児を育てる家庭の支えになるはずなのに、住んでいる自治体によって支給実態に格差が生じているのは問題だ。国は調査を進め、不公平な現実をすみやかに改めなくてはならない。

 2019年の厚生労働省のデータを基に共同通信が分析した結果によると、1万人当たりの支給児童数は全国平均で121人だった。最多の沖縄県269人に対し、最少の東京都は53人と5倍以上もの開きがあった。中国地方でも島根県171人、広島県169人に対し、岡山県が79人と倍以上の差がついた。

 支給対象となる児童は特定の地域に偏在するものではなかろう。自治体の判断が一律ではない可能性がある。

 原因は国のあいまいな審査基準にある。身体機能や検査結果で判定しやすい身体障害者に比べ、特に知的障害者の判断が難しくなっている。ところが国の基準では、軽度の発達障害については「不適応な行動が見られるため、日常生活への適応に援助が必要なもの」と定めているにすぎない。

 知的障害のある人は重度により「1〜4度」に分けられた療育手帳を持つ。沖縄県など多くの自治体はこの手帳を参考に全ての段階の人を対象とする。

 これに対し、東京都は最も軽度な4度の人は対象外とし、門前払いしている。こうした不公平をすぐに是正し、地域間の格差をなくすことが必要だ。

 申請が却下されるケースもばらつきが目立つ。横浜市は3〜4%台だった却下件数の割合が19年度は63・5%に急増した。千葉市39・7%など高い自治体がある一方で秋田県は0%、岩手県は0・2%と低い。

 支給の可否について、自治体は専門の判定医の判断に委ねている。だが判定医1人が書類審査するだけでは十分にチェック機能が働いているか疑問だ。

 横浜市のケースでは、新規申請を審査する判定医2人のうち1人が交代したことが急増の理由とみられている。判定医によって可否の判断が大きく変わるようでは信頼できる制度とは言えまい。

 申請件数にも隔たりがあり、1万人当たり40件の大阪市と8件の東京都で5倍もの開きが出ている。障害者団体などが基準明確化や審査方法の見直しを求めているというのも当然だ。審査結果の精度を高めるために複数の専門家でチェックしたり、他自治体の事例と比較したりすることも求められよう。

 高齢化が進み、社会保障費も増え続けている。だからといって、こうした手当の支給が抑えられるようなことはあってはならない。

 弱い立場の人たちをしっかり支えることが福祉の原点だ。国はこのことを肝に銘じて格差解消を進めるべきだ。

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