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自民総裁選告示 1強政治ただす論戦を

2021/9/18 6:00

 菅義偉首相の退陣表明に伴う自民党総裁選がきのう告示され、河野太郎行政改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4氏が競合する混戦模様となった。29日投開票される。

 首相経験者が立たないほか、「党内野党」として振る舞ってきた石破茂元幹事長も立候補を見送った。複数の女性が立つケースも初めてであり、ひとまず「人心の一新」「世代交代」が実現することは間違いない。党内7派閥のうち6派閥が事実上の自主投票とすることも含め、異例の総裁選といえよう。

 昨年の総裁選は党員・党友投票が見送られ、有力派閥の主導で菅氏が大勝した。安倍晋三前首相からの禅譲である。だが菅氏は1年で求心力を失い、退陣を余儀なくされた。このたびは「党風一新の会」と称する若手議員の動きが表面化するなど、安倍政権から菅政権へと続いた強引とも思える政治手法に、党内からも異論が出ている。

 いわゆる「1強政治」の功罪を4氏はつぶさに検証し、論戦すべきではないか。立候補に際して、その覚悟を求める。

 自民党が「国民政党」を掲げるのであれば、多様な意見や価値観を吸い上げる党風でなければなるまい。しかし2009年に民主党へ政権を明け渡し、3年後に奪還して以降は官邸に権力を集中させ、批判ははねつける体質へと変わる。その後の民主党の凋落(ちょうらく)も相まって、自民党内の「疑似政権交代」さえ起きない現実が眼前にあろう。

 ことしは現行の小選挙区比例代表並立制の衆院導入から25年になる。リクルート事件に端を発した「政治とカネ」の諸問題に終止符を打つべく、政治改革が叫ばれた時代があった。

 当時、自民党は非自民連立の細川政権樹立によって結党以来初めて野党に転落し、危機感を強めていたはずだ。村山政権で与党に復帰した後は他の連立与党と協力し、水俣病など戦後未解決の問題に力を注いだ。思想信条を超えて政治家が果たすべき役割を知っていたのだろう。

 一方、小選挙区制度は功罪相半ばするといっていい。候補者は党執行部の意向に縛られる一方で、総裁の「人気」に選挙結果が左右される現象も頻発している。このたびも「菅総裁では次の選挙を戦えない」という党内の声が湧き上がり、大なり小なり世論の支持を得ている4氏で落ち着いた感がある。

 総裁選で問われるべきは政治姿勢であり、政策だろう。4氏は森友・加計や「桜を見る会」など前政権時代の疑惑を党内でただすべきだが、向き合う姿勢は4氏の間に温度差があるようで、投票の目安になろう。

 政策にはそれぞれ独自色も見いだせる。河野氏は核燃料サイクル見直しを示唆し、岸田氏は「成長と分配の好循環」を公言し、新自由主義政策と一線を画すという。高市氏は「国家の主権と名誉を守り抜く」とし、野田氏は弱者が生きていける保守政治の実現を説く。むろん口約束で終わってはなるまい。

 4氏は財政再建や財政規律には触れているようすがない。積極的な財政出動論が目立ちはしないか。口あたりのいい話で受けを狙う時代ではあるまい。痛みも含めて「国民に説明する政治」の時代だろう。このたびの総裁選から実行すべきである。

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