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雇用調整助成金 財源確保の議論を急げ

2021/9/20 6:33

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府が雇用を守る対策の中心に据える雇用調整助成金(雇調金)の給付額が膨れ上がり、財源が底をつき始めている。

 厚生労働省は財源不足を補うため、労使で負担する雇用保険料の引き上げに向けた検討を今月から審議会で始めた。しかしコロナの収束が見通せない中、負担増に対して労使双方とも強く反発している。

 保険料の引き上げは実質的な増税となり、景気回復に水を差しかねないとの懸念もある。疲弊した経済状況が十分好転するまでは、一般会計からの繰り入れなど公費投入でしのぐことも選択肢にできないだろうか。

 雇調金は、企業が従業員に支払う休業手当を補助する制度。仕事や売り上げが減っても従業員を解雇せず、雇用を維持する「安全網」の役割を担う。

 厚労省はコロナの感染が拡大した昨年から、働き手1人当たりの支給の上限を日額8300円から最大1万5千円に引き上げる特例措置を設けている。

 当初は特例措置を一時的な対応と想定していたが、感染拡大が収まらず、延長を繰り返してきた。コロナの影響による給付総額は4兆3千億円を超え、さらにデルタ株による感染の第5波を受けて、11月末までの継続を決めている。

 この間、完全失業率は3%前後にとどまっており、5・5%まで上がったリーマン・ショック時と比べて低い。厚労省は、雇調金の特例措置などの効果で失業率を2・6ポイント程度抑制できたとしている。

 中小企業だけでなく航空会社や旅行会社など大手企業も雇調金を利用しており、制度が失業を防ぐ役割を一定に果たしているのは間違いないだろう。

 雇調金の主な財源は、企業が負担する雇用保険の保険料を積み上げた「雇用安定資金」だ。2020年度当初には1兆5千億円程度あったが、給付の急増で、ほぼ底をついた。このため一般会計から1兆1千億円を繰り入れ、労使が折半して保険料を負担している失業給付などの積立金からも1兆7千億円を借り入れて穴埋めしてきた。

 しかし雇用保険財政の逼迫(ひっぱく)度合いが解消されたわけではない。早急に財源不足を解消しなければ、制度自体が立ち行かなくなるのは明らかだろう。

 雇用保険の保険料率は積立金に余裕があったため、16年度に引き下げられ、据え置かれてきた。企業の負担で雇調金などの財源となる事業の料率は賃金総額の0・35%が0・3%、失業給付などを支払う事業は1・2%が0・6%になっている。

 審議会では、保険料率の上げ幅などについて年末にかけて議論を続けるとしている。これまでの会合では、労使双方の委員から「コロナ禍は雇用保険で支えられる枠を超えている。国の責任で公費を投入すべきだ」と安易な引き上げをけん制する意見が出ている。

 柔軟な対応は必要だが、公費を投入するにしても、結局は納税者である国民の負担になることは忘れてはならない。

 政府は雇用保険財政をどう立て直していくのか、道筋を示す必要がある。中長期を見据え、制度の見直しを含めて、持続可能な給付と負担の在り方についても議論を急ぐべきだ。 

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