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中国のTPP加入申請 覚悟あるか見極め必要

2021/9/22 6:39

 中国は先週、日本をはじめ11カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP)への加入を正式申請した。

 中国はもともと、TPPに対し米国主導で包囲網を築かれるとの強い警戒感を持っていた。ただ、トランプ米政権が離脱すると、態度を百八十度転換させた。今回の加入申請は、米国不在の隙を突き、アジア・太平洋地域での存在感を高める―など多くの思惑があるのだろう。

 しかしハードルは相当高い。貿易や投資の高度な自由化を掲げるTPPに加入するには、国家による統制経済の抜本的な改革が避けられない。その覚悟があるのか。国際社会に揺さぶりをかけようとしているだけか。慎重な見極めが必要となる。

 中国の加入が実現すれば、参加国にも経済面での恩恵があろう。10億を超す人口を抱え、巨大な市場でもあるからだ。

 世界経済に占めるTPPの国内総生産(GDP)のシェアも、今の13%程度から約3割まで格段に高まる。国際社会での存在感も明らかに増すはずだ。

 一方、中国にとっては政治的メリットが大きかろう。対立している米国をけん制することにつながるとみているようだ。

 米国は先週、英国、オーストラリアと共に、中国をにらんだ新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」をつくると発表した。日本、オーストラリア、インドとの「Quad(クアッド)」に続く、アジア・太平洋地域での対中包囲網で、中国を抑え込むための網を着実に広げている。

 中国が危機感を強めているのは間違いなかろう。対抗するため、TPPに加わりアジア・太平洋地域での経済的主導権の確立を図りたいのだろう。TPPに加わる意欲を示している台湾の加入も阻止できれば、「一石二鳥」というわけだ。

 ただ、加入には中国自身の変革が前提となる。

 中国は、日本や韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など計15カ国が来年1月までの発効を目指している「地域的な包括的経済連携(RCEP)」に加わっている。しかし、求められる透明性や公平性はTPPほどではない。国有企業への優遇策や、過度な補助金、知的財産保護、労働環境の改善など、TPP加入のハードルを越えるための課題は山ほどある。

 大国にふさわしい振る舞いも欠かせない。

 例えば国際ルールを守るつもりがあるかどうか。香港が英国から返還された時、「一国二制度」下の高度な自治を50年間は守ると言っていた。国際的な約束だったはずだが、あっさりほごにした。新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族への弾圧など、人権軽視は到底許されない。改善が急がれる。

 新規加入に必要な全てのTPP参加国からの承認も、すんなりとは進みそうにない。通商問題を巡って中国と対立しているオーストラリアが簡単に同意するとは思えない。この点でも、ハードルは決して低くない。

 中国は、どこまで真剣に加入を目指しているのか。身を切るような改革も辞さない強い決意があるのだろうか。慎重かつ冷静に本気度を見定めなければならない。とりわけ、閣僚級会合「TPP委員会」の議長国である日本の責任は重い。

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