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河井夫妻の買収原資 解明は自民党の責任だ

2021/9/24 6:39

 責任者が出てこずに問題はなかったと説明されても、どれだけの人が納得できただろうか。

 一昨年の参院選広島選挙区での大規模買収事件の原資を巡る疑惑である。自民党公認候補だった河井案里氏と、夫で元法相の克行被告の党支部に党本部から提供された1億5千万円が、夫妻による3千万円近い「ばらまき」に使われたのではないかと疑われている。党本部はおとといの会見で否定した。

 示したのは、夫妻の連名による書面を含む3枚の文書だけ。1億5千万円のうち1億円超を機関紙や政策チラシの作成、配布費に充てたほか、人件費や事務所費などに使ったという。

 ただ、それを根拠に「買収資金になっていない」というのでは、疑惑を拭い去ることは到底できない。河井夫妻の言い分をうのみにしただけではないか。

 同じ選挙区に出た当時の現職の10倍もの資金の提供を誰がなぜ、決めたのか。肝心の経緯についても説明せずじまい。しかも、会見に出てきたのは柴山昌彦幹事長代理だけだった。

 本来、決裁権限のある二階俊博幹事長や、当時総裁だった安倍晋三前首相が説明するのが筋のはずだ。「政治とカネ」の問題に真剣に向き合う姿勢がないと見られても仕方なかろう。

 提供された1億5千万円のうち1億2千万円は政党交付金、つまり税金だ。国民への丁寧な説明が欠かせないことを、まさか党本部は忘れたのだろうか。

 これまで、関係資料が検察当局に押収されているとして使途の詳細について棚上げにしてきた。今回やっと説明の場を持ったのは、11月までに実施される衆院選に向け、幕引きにする思惑だったのかもしれない。しかし、こんな不十分な説明で疑惑が拭えると考えているとしたら有権者をばかにしている。

 河井夫妻が広島県内の県議や市町議、首長らに手渡した現金は2680万円に上る。原資について、克行被告は「全て手元にあった資金」「議員歳費を自宅の金庫に入れていた」などと公判で説明した。しかし言葉通りには受け取れない。

 2019年分(12月末時点)の資産補充報告書によると、夫妻で計5千万円近い借入金があった上、検察が20年1月に夫妻の自宅を家宅捜索した際、金庫に大金はなかったという。手元の現金は残らず買収に費やしたとでもいうのだろうか。

 カネを受け取った側には「全て新札」「帯封の付いた状態」との証言があった。受け取りを拒むと「安倍さんからじゃけえ」「二階さんから」と総裁や幹事長の名前を挙げて渡されたケースもあった。

 安倍前総裁や二階幹事長ら党幹部の責任は重い。特に安倍氏は案里氏の擁立に関わり、選挙戦では自身の複数の秘書を広島に張り付かせて支援。当選後は克行被告を法相として初入閣させた。総裁として多額の資金提供を決めた以上の責任があろう。だんまりは許されない。

 破格の資金提供で夫妻の懐が豊かになったことが、大規模なばらまきの引き金になった―。そんな疑惑を明確に否定するには、カネに色が付いていない以上、参院選でのカネの流れを全て明らかにすることが必要だろう。党本部は洗いざらい調べて解明し、国民への説明責任を果たすべきである。


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