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ワクチン3回目接種 効果や安全性、見極めて

2021/9/26 6:44

 政府は、新型コロナウイルスワクチンについて3回目となる追加接種を行うことを決めた。年内開始を想定して準備を進めるよう自治体に要請している。

 接種を2回完了しても、感染力の強いデルタ株に「ブレークスルー感染」する人が増え、欧米を中心に3回目の接種に動く先進国が増えている。

 もちろん準備を怠ってはならないが、いつ、誰に打つかなどの根拠となる科学的なデータはまだ乏しいのが実情だ。有効性や安全性について慎重に見極める必要がある。

 国内では、2回接種を終えた人の割合が全人口の5割を超えたというが、まだ多くの自治体が対応に追われている。そこに追加接種が加われば手続きなどが複雑になって混乱する恐れが強い。接種率の地域間格差がさらに拡大する懸念も拭えない。

 いまは追加接種の導入を急ぐよりも、希望する国民への2回接種を早急に完了させることを優先すべきではないか。

 ワクチン接種が進めば社会活動を正常化できるとの想定は、デルタ株の出現で一変した。接種で先行していたイスラエルや英国などでも、いったん収まった感染が再び拡大している。

 ワクチン接種による感染予防効果が時間の経過とともに低下する可能性が指摘され、感染を防ぐ抗体の量も減っていくとの報告も国内外で出ている。

 そこで注目されたのが、免疫力を再び高めるために打つ「ブースター」と呼ばれる3回目以降の追加接種である。先頭を走るイスラエルは8月から60歳以上を対象に始め、12歳以上に広げた。フランスやドイツなどは、高齢者らを対象とし、若い健康な人には接種していない。

 米国のバイデン大統領は、全国民に3回目接種を9月から行う方針を表明した。ただ米食品医薬品局(FDA)の幹部らが「一般の健康な人も対象にするべきだと言える科学的根拠はまだない」との論文を発表するなど、身内からも異論が出た。

 全ての人に追加接種が必要かどうかは専門家の間でも議論が分かれている。さらに感染や発症、重症化を防ぐワクチンの効果が全て弱まっていくわけではないとの指摘もある。

 結局、FDAと接種の指針を示す米疾病対策センター(CDC)は、有効性や安全性のデータが不足しているとして、高齢者や重症化リスクの高い人らに限定して追加接種を承認した。

 厚生労働省は、2回目の接種から8カ月以上経過している医療従事者や高齢者から追加接種を行う方針でいる。この「8カ月」という間隔に科学的根拠はないという。海外の動向に追随するだけでなく、実際の対象や時期についてはデータに基づいて決める必要があろう。

 一方、先進国を中心に3回目接種が本格化していけば、途上国へのワクチン供給が遅れることが懸念される。限られたワクチンが先進国に偏在し、接種が進まない途上国では感染拡大が深刻化している。新たな変異株が出現する恐れがあり、コロナ禍のさらなる長期化につながりかねない。

 世界保健機関(WHO)は公平な供給の観点から、年内の3回目接種を見合わせるよう求めている。人道上の観点からも、ワクチンの格差が今以上に拡大することは許されない。 

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