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要支援者を地域で守ろう まずは「個別計画」作り【備える 防災最前線】

2021/8/21

 近年、中国地方で相次ぐ大雨災害では、高齢者や障害者たち「災害弱者」が被害に巻き込まれるケースが少なくない。迫る危険から逃げるには、事前に「個別避難計画」を作っておくことが望ましいほか、地域住民や福祉専門職との連携が不可欠だ。個別避難計画の作成は、今年5月の災害対策基本法改正で市町村の「努力義務」となった。身近な要支援者を守るため、私たちにもできることがある。

 ▽複数で役割分担/日頃の付き合い大切

 「個別避難計画」とは、高齢者たちがスムーズに避難できるようにするためのプランだ。要支援者の名前や住所、避難を助ける「支援者」の連絡先のほか、避難場所や経路などを紙に記している。

 市町など自治体の担当者、または本人や家族が作り、地域で共有しておくと役立つ。これまで、自治体から要支援者名簿を受け取った地域住民たちが作ってきたが、担い手不足などを理由に作成が遅れがちになっているのが実情だ。

 地域の負担感を減らしつつ、みんなで逃げるには「優先順位付け」から始めよう。まず、川の近くや山の斜面など危険な場所に住む人や独居の人を確認する。法改正を受け、優先度の判断は市町村が取り組むべき課題となった。

 次に「避難を呼び掛ける支援者」を探そう。お隣さんや家族など気軽に話せる人であれば、緊急時も迷いなく何度も電話できる。避難が必要な場合は、地域の消防団や自主防災組織が出動する。支援者はなるべく複数にし、それぞれが役割を抱えすぎないことが大事だ。

 ハザードマップを見ながら安全な避難経路を確認し、どのタイミングで避難を考え始めるかも具体的に話し合おう。持病やかかりつけ医、日中の通所先、障害特性なども聞いておくといい。

 計画を作っても「形だけ」になってはならない。重要なのは日頃からの住民同士のコミュニケーション。広島市防災士ネットワーク代表世話人の柳迫長三さん(71)は「ざっくばらんに病気や障害のことを共有し、『自分ごと』として助け合える地域が理想だ」と話している。

 ▽平時から情報集めリスト化し共有 福祉専門職との連携、広島市は

 法改正では、要支援者の災害時の支援に関し、自治体と福祉専門職が連携強化に取り組むよう求めている。障害者の支援を巡っては、広島市に先例がある。

 同市の「災害後の生活支援システム」では、災害時に各区の障害者基幹相談支援センターなどの相談支援専門員が、電話での連絡や避難所を訪問するなどして障害者やその家族に状況を聞き取る。必要に応じて別の避難先を調整したり、緊急的に利用できる事業所を探したりする。

 専門員は、障害者が福祉サービスの利用計画を定期的に更新する際、災害時の連絡先や障害の種類、利用中の事業所などの個人情報を確認している。家の上階に逃げるか、避難所に逃げるかなども話し合っておく。それらを「基本情報書」としてまとめ、各区のセンターがリスト化して市と共有する。つまり、平時から緊急時を想定した支援をしているというわけだ。

 システム作りに関わった安佐南区の相談支援専門員の一丸善樹さん(52)は「迅速な安否確認が何より重要」と強調。福祉サービスを利用していない障害者でも各区のセンターに登録をすれば支援が受けられるため、活用を呼び掛ける。

 住んでいる場所に包括的な支援システムがない場合でも、相談支援専門員やケアマネジャーたち福祉専門職とは災害を想定した相談をしてほしい。福祉避難所に直接避難するかどうかなども決めておくといい。

 また、福祉専門職は高齢者や障害者に対し、定期的に災害の備えや住まいの危険度などを啓発する必要がある。地域ケア会議や個別支援会議などで具体的な備えを話し合っておけば、関係者間で危機意識が共有できる。(高本友子)

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