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真鍋氏に物理学賞 温暖化警鐘の意義大きい

2021/10/6 6:37

 今年のノーベル物理学賞に、米国プリンストン大の上席研究員で米国籍の真鍋淑郎氏が選ばれた。

 地球温暖化の先駆的研究者として気候変動を分析する研究分野を開拓してきた。二酸化炭素濃度の上昇が大気や海洋に及ぼす影響を明らかにするなど「地球温暖化を予測する地球気候モデルの開発」が評価された。

 地球温暖化対策は今や国際社会の喫緊の課題となっている。人類をはじめとする生命存続のため、国境を越えて取り組むべき最重要の問題である。真鍋氏の研究は、地球環境の行方に警鐘を鳴らしてきた。それが高く評価された意義は大きく、受賞を喜びたい。

 日本の受賞は2019年の旭化成の吉野彰名誉フェローが化学賞を受賞して以来2年ぶり。物理学賞の受賞者は15年の梶田隆章氏以来、12人目となる。

 愛媛県四国中央市出身の真鍋氏は地球温暖化研究の第一人者。18年に地球科学や生物科学などの研究で傑出した成果を上げる研究者にスウェーデン王立科学アカデミーが贈るクラフォード賞にも輝いている。

 1958年に当時の米海洋大気局の研究員として渡米。開発されたばかりの超大型コンピューターを使い、二酸化炭素の増加が地球温暖化につながる関係をモデル計算で示した。

 97〜01年には科学技術庁(現・文部科学省)の研究組織、地球フロンティアシステム・地球温暖化予測研究領域長として研究チームを率いたこともある。研究成果は07年にノーベル平和賞を受けた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書にも生かされた。

 ただ地球温暖化に対しては懐疑論が根強くある。例えば米国のトランプ前大統領は一貫して温暖化を否定し続けた。今回の真鍋氏への授賞が温暖化理論の正当性を後押しするのは間違いなかろう。今月末から英国で始まる温暖化対策を話し合う国際会議にも弾みがつくはずだ。

 自然科学分野での日本の受賞は、米国籍取得者を含めて25人となった。00年以降に限れば、日本の受賞者は米国に続き2番目に多い。研究の質の高さや裾野の広さの表れだろう。

 しかし、先行きには暗雲が漂っている。

 自然科学分野の論文の質に関する最新の国際ランキングは、衝撃的だった。数多く引用されるなど注目を集める論文数で日本は、インドに抜かれ、過去最低の10位に転落した。

 米国はもちろん、今回初めて1位になった中国とは桁違いの差をつけられた。20年前は日本は4位だったことを考えると、衰退ぶりが際立っている。

 研究者数の伸び悩みが影響している。例えば博士号取得者は年間約1万5千人にとどまり、右肩上がりで増える米中に比べ06年以降は減少傾向にある。

 背景にあるのは、日本の科学技術政策だろう。とりわけ国立大への「運営費交付金」がここ20年近く減少傾向にあり、1割以上削減されたままだ。じわじわ研究環境を悪化させている。

 真鍋氏らに続き、日本が今後も、科学技術研究で力を発揮し続けられるか。岐路にあると言えよう。環境分野で世界に貢献するためにも、基礎研究を含めた科学分野の育成へ政府の支援が欠かせない。

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