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日大背任事件 カネの流れ徹底解明を

2021/10/12 6:43

 日本大医学部付属板橋病院の建て替え工事を巡り、日大の理事らが背任の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。

 日大は16学部、学生数6万8千人というマンモス校で、国からの補助金は2020年度だけでも約90億円に上る。その経営にあずかる幹部の逮捕だけに、由々しき事態である。事件の徹底解明が欠かせない。

 逮捕されたのは、日大理事の井ノ口忠男容疑者と大阪市の医療法人「錦秀(きんしゅう)会」前理事長の籔本雅巳容疑者である。2人は、建て替え工事の設計業者として特定の設計事務所の評価点を改ざんして選定。その業者に支払われた着手金から2億2千万円を不正に送金させ、日大に損害を与えた疑いが持たれている。

 カネは、籔本容疑者が出資する実体のない医療コンサルタント会社に振り込まれたという。その会社から約6千万円が井ノ口容疑者側の関連会社に回り、うち2千万円以上がさらに別会社を通じて井ノ口容疑者本人に渡ったとされる。

 明らかに怪しいカネの流れである。一体何に使われたのだろうか。籔本容疑者が人脈を持つ政界と結びつける見方もある。特捜部には、洗いざらい明らかにしてもらいたい。

 事件の「温床」を二つ挙げることができよう。一つは、舞台となった日大の関連会社「日本大学事業部」である。

 事業部は、学内の保険代理業をはじめ、自販機の管理や食堂運営、物品調達までを一手に引き受けている。日大からの業務委託費は20年度に100億円を超え、今回の事件でも設計業者の選定作業を担っていた。そうした全権を握っていたのが井ノ口容疑者である。

 なぜ、チェック機能が働かなかったのか。特捜部は今回、日大の田中英寿理事長も任意で聴取し、自宅などの家宅捜索をしている。「理事長付相談役」の名刺を持つ日大理事へと、井ノ口容疑者が異例のスピード昇格を遂げた背後に理事長の影響力を見て取ったのだろう。

 理事長も含め、他に日大関係者の関与がないかどうかは、捜査の重要なポイントだろう。

 もう一つの「温床」として、理事長に絶大な権限を許している日大経営陣の体質も問われているのではないか。

 日大アメリカンフットボール部のOBである井ノ口容疑者は、18年に起きた悪質タックル問題の後始末にも関わった。加害選手と親を呼び出し、監督の関与を否定するように口封じを図ったのだ。その非を問われ、大学の理事を辞任した。

 にもかかわらず、19年に事業部に復帰し、20年には大学理事にまで返り咲いている。この間、糸を引いた田中理事長は説明を尽くしていない。

 組織統治の欠如と、説明を果たさぬ理事長の責任―。悪質タックル問題の第三者委員会で3年前、あれほど批判を受けながら、その病根がまたもや頭をもたげた格好である。

 不透明なカネの還流が、検察側の見立て通りだとすれば、公共財である大学の「私物化」にほかならず、到底許されない。

 日大側には、事実関係を自ら確かめ、説明すべき責任がある。110万人を超すという卒業生も見守っていよう。今度も決着をつけられぬようでは、信頼回復など図れるはずがない。

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