「原爆の日」特集

【2014平和のかたち〜ヒロシマから】漫画家・西島大介さん

2014ヒロシマ2014/8/15 9:47
漫画家・西島大介さん

漫画家・西島大介さん

価値観の違い 考えたい

 「平和のために、これをしなきゃ駄目」と強制されない状態が平和なのではないか。平和を求めるデモに参加するのも、家族の平和を優先するのも、同じくらい大事。「絶対的な平和」というのはないと思う。

 広島本大賞を受賞した「すべてがちょっとずつ優しい世界」は、原発を誘致した貧しい村をモチーフにした寓話(ぐうわ)。自分の主張はあえて前面に出さなかった。事故への憤りはあるが「町が発展すれば、医者が来る」などと原発に賛成した人たちの価値観もある程度、理解できたからだ。

 多様な価値観を持つキャラクターを登場させ「あっ、こんな意見もあるんだ」と考えるきっかけを与えるのが、僕のやり方。その方が不特定多数、無関心層にも届きやすい。

 東日本大震災の後、「世の中は多様性でできている」との考えを強くした。福島第1原発事故を機に、東京から実家のある広島に移り住み「電気がなくなったらどうする」と全原発停止に反対する父と言い合いになった。国難の事態にも、親とでさえ共通見解を持てないのかと驚いた。

 二人の落としどころは「とりあえず、墓参りに行こう」。原発への考えは一致しなくとも、父子の平和は保たれた。

 価値観の違う人、特に異なる世代との対話を大事にしたい。身近な人からでいい。あらかさまに中国、韓国をけなす人たちがいるが「もう少し考えてみようよ」と言いたい。食文化や経済などでの深い交流を忘れて、自分たちの思考が政治や国家の枠組みに組み込まれすぎていないかと。

 ヒロシマは、平和を考え続けることを宿命づけられている街だ。僕は、高校生の多感な時期を広島市で過ごしたが、平和教育には関心がなかった。「平和活動はこうでなくてはならない」という枠を外し、もっと面白がりたい。エンターテインメントと絡ませてもいい。次の選挙の1票を左右するような即効性はなくても、そうした平和を考える土壌づくりが大事だと思う。(聞き手は馬場洋太)

 にしじま・だいすけ

 東京生まれ。父親の転勤に伴って広島市の井口中、観音高を卒業後、東京で漫画を独学。2004年に「凹村戦争」でデビューした。東日本大震災を機に、11年から広島市西区で暮らす。代表作は、ベトナム戦争をテーマとした「ディエンビエンフー」など。39歳。

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