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ほえる「心あるモノ言う犬」

2021/10/13 6:54

 〈狡兎(こうと)死して走狗(そうく)烹(に)らる〉。すばしこいウサギが消えると、猟犬はお払い箱になる。宿敵が滅ぶと忠臣も身内に討たれるとのたとえ。司馬遷「史記」が語源である▲こちらの一文の「犬」も含むところがあろう。現職の財務事務次官矢野康治氏の「文芸春秋」への寄稿。国家公務員は「心あるモノ言う犬」であれ、と直言している。というのも、日本は今、国と地方で1166兆円の借金を抱えるのに、直視しないまま「ばらまき合戦」の政策論が横行しているからだという▲もはや黙っていられないと官僚はほえた。これに対し、困っている人を助けないのか、私的な意見を述べたのだろう―などと、冷ややかな反応は与党内から▲コロナで疲弊した経済の再建は必須だろう。だが、ここにきて与党周辺が財源を巡る議論を避けているのも事実。矢野氏は財務省きっての財政再建論者で、直言の人だという。恐らくはブレていない。ブレるとすれば、眼前に選挙しかない人たちか▲タイタニック号が氷山に突進するようだと、矢野氏は借金財政をたとえた。豪華客船は他船の警告も聞かず北の海に消えた。こちらの船内には、沈まぬための警鐘が鳴らされている救いがある。

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