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教員の残業代 制度の見直し急がれる

2021/10/14 6:00

 勤務時間に応じた残業代が支払われないのは労働基準法に違反するとして、埼玉県の公立小教員の男性が県に支払いを求めた訴訟で、さいたま地裁が注目すべき判決を下した。

 判決は男性の請求を退けたものの、公立学校教員に時間外手当を支給しないと定める教職員給与特別措置法(給特法)について「もはや教育現場の実情に適合していない」と付言した。さらに「原告の問題提起には意義がある。教育現場の勤務環境改善を切に望む」と指摘した。

 実態に見合わない制度を見直し、教員の働く環境を見直すよう強く警告した判決と言える。国や自治体は、重く受け止める必要がある。教員の労働環境改善を急がねばならない。

 給特法は、校外実習、学校行事、職員会議、非常災害の4項目に該当するやむを得ないケースに限って、公立教員の時間外労働を許容すると定めている。月給の4%相当を調整額として支給する代わりに、時間外や休日の勤務手当は支給しないとする特殊な制度である。

 しかし現実には、登下校の見守りや部活動の指導など、教員の仕事には4項目に該当しないものが多岐にわたる。どれも「自発的な活動」とみなされているのが実情だ。長時間労働の温床になっていると現場の教員らから、かねて見直しを求める声が上がっていた。

 原告の男性も、勤務時間開始前に登校指導やマラソン練習などに当たっていた。勤務時間中の休憩時間も、児童の見守りや打ち合わせなどでつぶれ、残業なしには事務作業などが済まない状況だったという。

 文部科学省の2016年度の勤務実態調査では、週60時間以上働いている教員は小学校で3割強、中学校で6割近くに上った。月に換算すると過労死の労災認定の目安80時間を超える。

 給特法は、教員の残業時間が月平均8時間だった約半世紀前にできたものだ。判決が言うように現状とかけ離れているのは明らかである。教員の労働に、正当な対価を支払うのと同時に、過重な負担を減らす方策を打ち出さねばなるまい。

 文科省は19年、教員の残業時間の上限を月45時間とする指針を定めた。同年に成立した改正給特法では、勤務時間を年単位で調整し、夏休みなどに休日をまとめて取得できるようにする「変形労働時間制」の導入も盛り込んでいる。しかし業務量に見合った教員の配置などをしないまま、現場に任せきりでは抜本的解決にはつながらない。

 昨年来の新型コロナウイルス禍で、校内の消毒作業やオンライン対応など、現場の負担はさらに重くなったという。文科省は22年度から小学校高学年で教科担任制導入も検討している。人材確保は急務である。

 ところが近年、教員志望者は減少している。文科省の調査では、19年度の公立小学校の教員採用試験の競争率は全国平均で2・7倍と過去最低だった。自治体によっては必要な教員の確保が懸念される状況という。

 教員が日々の仕事に忙殺されている現状を改め、余裕を持って働ける環境と労働実態に見合った手当がなければ、未来を担う子どもたちに悪影響が及びかねない。国は法制度の見直しや財源確保について、検討を進めるべきだ。

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