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<'21衆院選>経済政策 「分配」の財源が見えぬ

2021/10/17 6:53

 新型コロナウイルスの感染再拡大を抑え込みながら、疲弊した経済をどう再生させていくのか。衆院選では経済政策が最重要の争点の一つになる。

 与野党ともそろって公約に「分配」を掲げ、巨額の財政出動を打ち出している。アベノミクスによる金融緩和や法人減税の恩恵は大企業や富裕層ばかりに回った。家計への分配は乏しく、格差は拡大し、消費も伸び悩んだ。

 格差をどう是正するかは、日本のみならず、国際社会の課題になっている。国全体で稼いだ富を、中間層や低所得者層にもっと回すべきだとの主張は理解できる。

 ただ、各党の公約は給付や減税のオンパレードで、財源なき競い合いのように映る。財務省の事務次官が雑誌への寄稿で「ばらまき合戦」と批判したのもうなずける。選挙目当ての大盤振る舞いなら、無責任に過ぎる。選挙では、財政負担と効果についてしっかり論じ、各党とも政策の実現可能性を具体的に示す必要がある。

 与党の自民党を率いる岸田文雄首相は「国民の暮らしや仕事を守り抜くため経済対策をしっかり進めなければならない」と強調。年内にも数十兆円規模の経済対策を策定し、現金給付も視野に個人や事業者への手厚い支援を約束する。

 連立を組む公明党は18歳までの全ての子どもに一律10万円相当を給付するとした。

 野党も、対象や金額に違いがあるものの、ほとんどの政党が現金給付策を盛り込む。

 さらに立憲民主党は時限的な措置として、年収1千万円程度までの世帯を対象に所得税の免除をうたう。加えて共産党や日本維新の会、国民民主党とともに消費税の5%への引き下げを主張している。

 コロナ禍の収束はまだ遠く、困窮する個人や事業者の支援が急がれる。そのための財政出動は避けられないとはいえ、数十兆円規模の対策が必要かどうか疑問が残る。

 コロナ対策では昨年度、過去最大となる31兆円弱の予算を使い切れず、21年度に繰り越した。規模ありきではなく、内容を精査し、必要な施策を丁寧に積み上げていくことが重要だ。

 給付金も昨年、安倍政権が国民に一律10万円を支給したが、大半は貯蓄に回った。消費の押し上げ効果は限定的で、持続的な成長にはつながらない。同じ愚を犯すことにならないよう、給付対象は本当に困っている人に絞り込むべきだ。

 政策実現に向けた財源確保が十分でない点も問題である。岸田首相は「新しい資本主義の実現」をスローガンに所得の再分配の強化を唱えるが、中身はまだ漠然としている。

 その財源として株式売却益など金融所得課税の引き上げなどに意欲を見せていたが、自民の公約には盛り込まれていない。足りない分は国債を充てるとするのは、野党も変わらない。

 格差是正は構造的な問題で、景気対策のような短期的な取り組みでは解決はできない。国債の発行を頼って恒久財源の議論を後回しにすれば、将来世代へのツケを一層増やしかねない。

 コロナ禍を克服した後は、財政再建にも取り組まざるを得ない。その道筋についてもしっかり示す必要がある。

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