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<'21衆院選>コロナ対策 医療強化へ具体策示せ

2021/10/19 6:40

 新型コロナウイルスの感染再拡大をどう防ぐのかは、衆院選の大きな焦点だ。

 昨年1月以来、国内の感染者は170万人を超え、1万8千人以上が亡くなっている。病床の確保が追いつかず、自宅療養中に亡くなる人も相次いだ。

 過去最大の感染拡大を招いた「第5波」は下火になっているものの、安心はできない。「第6波」はいつ来るか分からない。今こそ、これまでのコロナ対策を検証し、次への備えを固めるときである。

 喫緊の課題は、都市部に限らず、重症者に対応できる設備を備えた病床の拡充だろう。

 政府は感染再拡大に向けた取り組みの「骨格」を発表した。第5波に比べてウイルスの感染力が2倍になっても対応できるよう体制を整えるとした。入院患者の受け入れを2割増やし、病床使用率も8割以上にする。

 だが感染力が2倍になるのに病床数はなぜ1・2倍でいいのか説明が不十分だ。具体策の策定も来月以降になる。目標の根拠や達成方法を示さなければ、選挙目当てに見栄えの良い「看板」を掲げたと言われても仕方あるまい。

 立憲民主党や共産党は、公立・公的病院の統廃合や病床削減を進める政府の地域医療構想の見直しを主張する。ただ病床数を確保できたとしても、直ちに医療現場の人員を補充、増員するのは極めて難しい。

 病床確保の責任を全体の3割にすぎない公立・公的病院だけに負わせるわけにはいかない。政府は自治体や医師会などと連携し、民間医療機関の協力を得ながら病床や医療人材の機動的な融通を実現するべきだ。

 12月に始まる見通しの3回目のワクチン接種も課題だ。まずは医療従事者、次に高齢者が想定されるが、政府は年齢など具体的な接種対象やワクチンの種類を示さないまま、自治体に準備を求めている。混乱を招かないためにも全体像を早期に示さなくてはならない。

 政府が目指す行動制限緩和も不安材料がある。ワクチン接種証明や検査の陰性証明を活用する「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験も始まった。自民党の公約には、旅行需要喚起策の「Go To トラベル」の早期再開も盛り込んでいる。

 経済優先の前のめりな姿勢が気掛かりだ。行動制限を緩める場合は、感染の再拡大に備えて、対策を強化する基準を明確にしておく必要がある。

 長期的な課題も、正面から論じあってほしい。国内のワクチン開発力の強化も不可欠だ。副反応などの訴訟を恐れ、企業はこれまで腰が引けていた。政府は、大学や研究機関を積極的に後押しし、経口薬などの普及も急ぐべきだ。

 菅義偉前首相は退任会見で、病床や医療従事者を確保する難しさ、縦割りの省庁、国と地方自治体との連携不足をコロナ対策の課題として挙げた。目指す方向は見えていたが、実行力や調整力が欠けていたということなのだろう。

 病床を機動的に運用できない医療資源の脆弱(ぜいじゃく)さや、なかなか拡充できなかった検査に加え、保健所の手薄な態勢も浮き彫りになった。衆院選では、与野党とも構造的な問題に切り込む具体的な改革案を示し、競い合うべきだ。 

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