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「社長のおごり」自販機

2021/10/24 6:49

 落語「長屋の花見」。おごりだと言って大家が店子(たなこ)連中を花見に誘う。ところが酒は煮出した番茶を薄めた代物。お重を開ければ「大根とたくあん」が「かまぼこと卵焼き」の代わりで、一同肩を落とす▲それでも「はたで見てりゃ、花見のように見えらあね」と大家が言うので渋々土手へ。「おれのおごりだと思うと気詰まりだろうから、きょうは無礼講だ」と調子に乗ると、ばかばかしいと店子は陰口をたたく。一句ひねれば<長屋じゅう歯をくいしばる花見かな>と相成る始末▲こちらは渋ちんにあらず。「社長のおごり自販機」を飲料メーカーが開発した。オフィスに置いてもらうという▲社員2人が同時に社員証をかざすと、飲み物が無料で2本出る。コロナ禍で在宅勤務が広がり、職場で雑談の機会が減っていることに着目した。無料の分のお代は勤め先が持ち、「社長の―」を「工場長の―」などに変えてもいい。これなら店子、いや、社員も陰口をたたくまい▲こぼしたって惜しくねえ―と落語では偽酒をつがれる店子がやけになるが、オチは秀逸。湯飲みに「酒柱」が立ってます―。吉凶にはこだわらぬ小欄だが、茶柱一つにも和む職場が健在だといい。

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