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岸田首相の一本足打法

2021/10/28 6:51

 その奇策は57年前、こどもの日に飛び出した。前の試合で4打席連続の本塁打をかっ飛ばしたプロ野球巨人の王貞治さんが左打席に入る。すると相手守備陣は皆、一塁線寄りに▲当時の広島カープ監督白石勝巳さんが編み出した王シフトである。「流し打ちをしてくれたら、一本足打法もきっと崩れるはず…」。だが、汗で築いたフォームに揺るぎはなかった。晩年、白石さんは「感服するしかなかったよ」と振り返っていた▲岸田文雄首相は、好きな野球を例え話によく持ち出す。原発再稼働の理由でも「再生可能エネルギーに頼る一本足打法は、電力の安定供給などの点で十分ではない」と▲それなら「核なき世界」の実現はどうだろう。米国との共同歩調に頼る姿勢は一本足打法に映る。核兵器を持つ国と持たぬ国との「橋渡し」役をうたっても、米の差し掛ける「核の傘」にこもる足元を見透かされていよう。仲介役は務まるだろうか▲例の打法の極意を王さんはこう語る。「右脚を上げて体の力を一点に集中し、球にぶつけていく」。日米の絆が軸足なら、もう片方で踏み込むべき足場は核兵器禁止条約だろう。被爆国の使命を示し、ぶつかる構えが望まれる。

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