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走行中の列車で事件相次ぎ不安 安全と利便性、両立課題【こちら編集局です】

2021/11/8 22:56

 広島発鹿児島中央行き九州新幹線内で8日、男が火を付けようとして現行犯逮捕された。10月31日には東京都内を走行中の京王線特急内で乗客刺傷事件が起きたばかり。走行中の列車内という「密室」で相次ぐ凶行に、利用者は不安を募らせる。編集局は読者にLINE(ライン)で受け止めを尋ね、交通各社に対応を聞いた。

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 「鉄道の事件は都会で起きる『対岸の火事』と思っていた。広島発の新幹線で起きたと聞くと、一気に身近になった」と、呉市の主婦(47)はおびえる。安芸高田市の男性(50)は「通勤でJRを使う。逃げ場がない場所で事件が起きるかもしれないと思うだけで恐ろしい」と不安の声を寄せた。

 近年、列車内が現場となる事件が続く。2018年6月には東海道新幹線内で3人が殺傷される事件が発生。今年8月には小田急線の快速急行内で、10月には京王線特急内で殺人未遂事件がそれぞれ起きた。

 事件を受け、読者からは交通各社に対策を求める声が相次ぐ。「新幹線や長距離のバスなど長時間乗るものはチェックを厳しくしてほしい」と広島市西区の会社員女性(28)。「手荷物検査をしてほしい」「改札口に金属探知機の設置を」「車内に警備員を配置しては」との意見もあった。

 一方、荷物検査などが導入された場合、乗客が列車に乗り込むまでの時間が長くなる。利便性が低下するほか、コストも乗客に跳ね返る恐れもある。安佐南区の男性(48)は「交通機関が四六時中警戒することは難しい。万全な対策はない」と指摘する。

 国や交通各社も対応を検討してきた。国土交通省は東海道新幹線の殺傷事件を受け、乗客が梱包(こんぽう)していない刃物類を車内に持ち込むことを禁じた。今年7月には、乗客の手荷物検査ができるよう省令を改正している。

 ただ、JR西日本広島支社管内で手荷物検査をした実績はない。同支社は「鉄道の利便性に影響するため、慎重な議論が要る」としつつ「事件はいつ起きるか分からない。必要性の検討を進めたい」とした。そのほか、危険行為をしている人物の目くらまし用のフラッシュライトを全乗務員に配備。車両内の防犯カメラは、山陽新幹線で設置が進んでいるという。

 広島電鉄(広島市中区)も新型コロナウイルス禍で自粛している乗務員の車内の見回り再開を検討する。

 では、列車内で危険を察知した場合、乗客はどう行動すればいいのか。同支社はJRの各車両に備えられている「車内非常ボタン」の使用を促す。ボタンを押すと列車は緊急停車し、マイクが付いているタイプでは乗務員に直接連絡できる。同支社は「異常があれば、ためらわずにボタンを」と求める。

 読者からは「刃物などから身を守るため手荷物を近くに置く」などの自衛策も届いた。下松市の30代看護師女性は通学で電車を使う子どもに「『ホームに立つ時は線路から離れる』『スマートフォンに集中しすぎないように』と伝えている」という。利用者側にも、周囲を警戒する意識が広がり始めている。(高本友子、東山慧介)

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