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期日前投票の理由、「介護」の項目ない 宣誓書の選択肢に困惑【こちら編集局です】

2021/11/9 22:50
介護などの理由を書く欄がない福山市の期日前投票の宣誓書(上)と、「その他」の欄がある広島市の宣誓書(下)

介護などの理由を書く欄がない福山市の期日前投票の宣誓書(上)と、「その他」の欄がある広島市の宣誓書(下)

 「介護は、期日前投票をする理由にならないの?」。衆院選や広島県知事選(14日投開票)などの選挙が相次ぐ中、疑問の声が編集局に届いた。投票日に投票所へ行けない有権者が期日前投票をする際、理由を記す宣誓書に「介護」の選択肢がなかったという。なぜなのか。そもそも、なぜ理由を申告する必要があるのだろう。

 ▽自治体で差 専門家「書式工夫を」

 声を寄せたのは広島県安芸郡の60代の女性。障害がある子どもがいて、日曜は福祉サービスを利用できないので期日前に投票したいという。ただ、女性の住む自治体の宣誓書では、どの理由の項目を選べばいいか分かりにくい。「担当者に『深く考えず仕事の項目に丸を付けたらいい』と言われ…。もやもやします」。

 2003年に導入された期日前投票は、選挙の公示・告示の翌日から投票日の前日まで、投票所で1票を投じられる仕組みだ。

 総務省によると、日本では投票日に投票するのが原則。期日前の投票は「例外」であり、公選法が(1)職務や業務に従事する(2)用事で投票区の外にいる(3)病気などで歩けない―など、6区分の理由にあたる人に限定。同法施行令で宣誓書の提出を求めている。つまり、理由の申告は法律で決まった手続きなのだ。

 では「介護」は理由にならないのだろうか。総務省選挙課によると、6区分のうち(1)の職務または業務とは、常日頃繰り返されている務めであって職業に限定されない。介護は、この(1)に「該当しうる」という。ただ、宣誓書に掲げた理由のうち、どれに丸をするかは「本人の判断」とする。

 広島県選管によると、宣誓書は公選法施行規則で決められた様式に準じ各市町の選管が作る。このため、選択肢に掲げる文言などは自治体によって異なる。例えば、広島市では「その他」の項目に理由を自分で記入でき、「介護と書いてくれればいい」とする。福山市などは記入欄を設けていない。

 有権者にはこんな意見もある。「本当は、投票日にこれといった用事はない。うそをついているようで後ろめたい」と江田島市の60代女性は漏らす。ある自治体の職員は「時間に余裕があるから来た、と正直に言われると困る。真面目な人ほど混乱する『宣誓書トラブル』はある」と明かす。

 総務省によると、申告した理由と実態の照合はしていない。法の定めとはいえ、理由を申告する意義が有権者には分かりにくい。

 広島大の新井誠教授(憲法)は「公示・告示から前日まで選挙運動を十分に吟味し当日に票を投じる『当日主義』には、1票はそれだけ重い、という理念が前提にある。理由を不要にすると原理原則の枠組みを外れてしまう」と指摘する。

 一方「有権者が戸惑う現状は見直されるべきだ。宣誓書の言葉を理解しやすいように工夫するなど国がマニュアルを準備してはどうか」と提案する。

 10月31日に投開票された衆院選で広島県では投票した人の3割強が期日前を利用した。制度が浸透してきただけに、多くの有権者がもやもや感なく投票できるようにしてほしい。(新本恭子)

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