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大谷選手MVP 常識覆す二刀流の快進撃

2021/11/21 6:56

 投打の二刀流で今季、大活躍した米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が最優秀選手(MVP)に輝いた。全米野球記者協会の記者30人から満票で選出された。

 シーズンで最も活躍した選手に贈られる権威ある賞だ。日本人では2001年のイチロー選手以来、20年ぶり2人目となる快挙をたたえたい。

 大リーグ4年目となる今季、投げては9勝2敗、防御率3・18、156奪三振。打者でも打率2割5分7厘、リーグ3位の46本塁打、100打点、26盗塁の記録を残した。

 伝説の選手ベーブ・ルース以来の二刀流に本格的に挑み、野球の原点である「投」「打」「走」のどれも驚くほどのレベルでやってのけた。

 ポジションや役割の専門化と分業化が進むプロの世界にあって、投打どちらかに専念しなければ成功しないという固定観念を覆した衝撃は大きい。常識に縛られず、挑戦する大切さを教えてくれた。だからこそ競技の枠を超えて、多くの人の共感を呼んだのだろう。

 順風満帆だったわけではない。大リーグに移籍した18年には4勝、22本塁打で新人王に輝いた。しかしオフに右肘靱帯(じんたい)の再建手術を受け、2年目は打者に専念した。昨季は二刀流に復帰したものの、打率は1割台、7本塁打にとどまり、2試合に投げただけで終わった。

 けがとの闘いで不振を極めていただけに、ここまで二刀流を成功させ、驚くような成績を残すとは誰も予想できなかったのではないか。

 背水の陣で臨んだ今季、球団首脳と話し合って投打の同時出場や登板日前後の打者出場など、これまで課してきた制約を外した。162試合の長丁場で欠場はわずか4試合だった。

 科学的な知見を踏まえた地道なトレーニングで強靱(きょうじん)な肉体をつくり上げた成果だろう。大谷選手も受賞会見で、「けがなく1年間できたのが一番良かった」と語った。二刀流でシーズンを完走したことは大きな自信になったはずだ。

 二刀流については、岩手・花巻東高からプロ野球の日本ハムに入団した頃には懐疑的な見方が強かった。どちらも中途半端になるとか、肉体的にも精神的にも負担が大きく、けがもしやすくなるなど。しかし日本ハムは投打両面で特別な才能を伸ばすと決め、試みた。

 エンゼルスもそれを引き継ぎ、大谷選手の将来性に懸けた。今季になって結実し、投打とも大リーグのトップレベルで活躍できる実力を証明した。

 型にはめず、個性を尊重しながら練習や試合での起用法を工夫する。そうした指導と育成の環境が今の大谷選手をつくり上げたと言えよう。

 大谷選手の魅力は160キロを超える速球や豪快なホームランだけではない。いつも笑顔を絶やさず、伸び伸びと野球を楽しむ姿は、スポーツの素晴らしさを再認識させてくれた。

 新型コロナウイルス禍で、社会が閉塞(へいそく)感に覆われる中、大谷選手の活躍を伝えるニュースに勇気や希望をもらった人も少なくなかったはずだ。

 まだ27歳と若い。今季の成績は単なる通過点にすぎない。体力的にも技術的にも、さらに進化した二刀流に期待したい。

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