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なったらおしまいではなく…

2021/11/21 6:56

 今日は何年何月何日何曜日ですか。これから言う数字を逆に言ってみてください―。映画「明日の記憶」に、物忘れや体調不良を訴える主人公が医師からそんな質問を受けるシーンがある▲使われているのは「長谷川式スケール」と呼ばれる認知機能診断の物差しだ。高齢者向けの健康講座で見聞きした人がいるかもしれない。開発したのは、認知症医療の第一人者として知られる精神科医の長谷川和夫さん。92歳の訃報がきのう届いた▲スケールができた50年近く前、認知症の人は「何も分からなくなった人」としてひどい偏見にさらされていた。家で閉じ込められたり、精神科の病院でベッドに縛り付けられたり…▲そんな実情を目の当たりにしたからだろう。患者の尊厳を守り、その人らしさを大切にする「パーソン・センタード・ケア」の理念を広めるのに力を尽くす。「痴呆」という用語を「認知症」に変えるのにも貢献した▲4年前には自ら認知症を公表し、当事者としての思いや発見を著書につづった。認知症は「長寿の時代、誰もが向き合って生きるもの」「なったらおしまいではない」―。長谷川さんが身をもって示した数々の言葉が、未来を照らしている。

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