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今、石油備蓄を取り崩す?

2021/11/22 6:39

 島々のあわいを、巨大なタンクが埋め尽くす奇観を見たことがある。沖縄・平安座島(へんざじま)の丘から地先の海に広がる石油備蓄基地(CTS)である。沖縄本島とは4・75キロの「海中道路」でつながる▲ヘンザは干潮を意味する方言だという。かつては歩いて渡れもしたが、架橋は島の悲願。民がバケツで石を運び、自力で築こうとした時代もあった。CTSの見返りに海中道路は実現したが、巨大開発に住民運動が異を唱えたことも。石油備蓄という国策は小さな島を揺るがした▲湾岸戦争や東日本大震災の折に日本は備蓄を取り崩したことがある。ところが、先週末の首相発言は原油相場の引き下げをもくろんでのことらしい▲確かに原油高騰は「コロナ後」の経済に痛手だ。政府は石油元売り会社に補助金も出すという。だが店頭価格の引き下げにつながるかどうか、評判は芳しくない。取り崩した備蓄の収入を補助金の財源に充てるかもしれぬと聞くと魂胆が読めてくる▲かつて資源の乏しい日本が無謀な戦争に打って出たことを思うと、石油備蓄は平和と民生安定の証しだろう。いざというときの「いざ」とは。このたびの備蓄取り崩しを巡っては、なお議論があっていい。 

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