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特養の月額利用料2万2千円も上がった 「あまりに負担重い」 なぜ今?【こちら編集局です】

2021/11/23 21:09
男性の母が入所する特別養護老人ホームの利用料領収書。8月以降、食費の負担額が倍増した(画像の一部を修整しています)

男性の母が入所する特別養護老人ホームの利用料領収書。8月以降、食費の負担額が倍増した(画像の一部を修整しています)

 「特別養護老人ホームで暮らす母の月額利用料が急に2万2千円も上がった。なぜ今」―。広島市安佐南区のタクシー運転手の男性(53)から編集局に戸惑いの声が寄せられた。8月に介護保険制度の変更があり、所得の低い人向けの食費・居住費の補助が縮小されたという。「あまりに負担が重い」。制度見直しが一部の高齢者の暮らしを直撃している。

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 9月下旬、男性は認知症の母(81)が入所する施設の利用料領収書に目を見開いた。8月が3万2120円だったのに対し、9月は5万4130円と1・7倍になっていた。

 介護施設での食費や居住費は原則自己負担だ。しかし男性の母は、住民税非課税世帯を対象に食費と居住費を軽減する「補足給付」を利用してきた。収入などに応じて負担限度額を決める制度で、8月に基準が改定された。年金などの収入が120万円を超える人は、1日の食費が650円から1360円に上がった。

 男性は「自分も新型コロナウイルス禍で収入が減り家計を切り詰めていたところ。なぜ今、という思いが拭えない」と嘆く。

 今回の改正では、要件の一つである預貯金などの上限も引き下げられた。これまでは収入にかかわらず単身世帯では預貯金などが1千万円以下の人が対象だった。改正後は3段階に分けて上限が下げられ単身世帯の上限は650万〜500万円に変わった。

 厚生労働省によると、補助を受けていた人は全国で約100万人。今回の見直しで約27万人の負担が増えたもようだ。市介護保険課によると、改正後「ただでさえ苦しいのに」との切実な声も届くという。

 改正は、特養などで暮らす人と、在宅で暮らす人との負担の公平性を図る狙いがある。

 また、膨らみ続ける介護費用も背景にある。65歳以上の介護保険料の全国平均は、制度開始時の2911円(2000〜02年度)から6014円(21〜23年度)と、約2倍に跳ね上がった。国は自己負担を増やし、増大する介護費用を抑える狙いだ。

 3年ごとの改正のたび、負担の増す介護保険料。厚労省は「介護保険制度を維持するため」とするが「負担が重すぎる」との声もある。

 県立広島大の金子努教授(社会福祉)は「『介護の社会化』からの逆行が起きている」と述べる。家族が担うものという風潮が強かった介護を、社会全体で支えようとしたのが介護保険制度だった。「低所得者支援のカットにまで踏み込むのは『ここまできたか』という印象。介護保険制度の維持が目的になっており、このままでは格差が広がるばかり。税の負担の在り方を含め制度を議論し直す必要がある」と話している。(高本友子) 

 <クリック>補足給付 特別養護老人ホームなどで暮らす低所得者に対し食費と居住費を助成する制度。食費と居住費は2000年の介護保険創設時には保険給付の対象だったが、在宅の高齢者との公平性を保つため05年に自己負担となったため導入された。ショートステイの利用者も対象となる。21年8月から、一定額以上の収入や預貯金のある人の負担額が見直された。

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