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広島市の中央図書館、駅前移転に賛否 将来も愛されるには【こちら編集局です】

2021/11/26 22:52
都心にありながら木々に囲まれて立つ中央図書館

都心にありながら木々に囲まれて立つ中央図書館

 広島市の中央図書館(中区)をJR広島駅前の商業施設「エールエールA館」(南区)に移す市の方針について、こちら編集局のLINE(ライン)で受け止めを尋ねると、賛否両方の意見が寄せられた。駅前で利用しやすくなるとの期待の一方、緑豊かで静かな環境にある現在地を支持する声もあった。駅前に移ると不便になるとの意見も聞かれた。

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 市は、築47年の中央図書館は耐震基準を満たさず書庫も不足していると説明。2025年度にもA館に移す方針だ。駅に近い▽建て替えより財政負担が軽い▽A館は耐震基準を満たす―点から適地と強調。中央図書館と同じ建物内にある映像文化ライブラリーと近くのこども図書館も一緒に移し、広島の歴史文化を味わえる空間をつくるとする。

 移転賛成派は駅前の立地に着目する。安佐南区のパート藤田恵美子さん(59)は「駅の目の前で場所が分かりやすく、買い物や食事など何かのついでに立ち寄ることができて便利。利用者も増えるのではないか」。南区の公務員女性(37)は「A館は便利な場所にあるのに人が少なく気になっていた。てこ入れはうれしい」と期待する。

 財政面を重視したのは西区の契約社員男性(73)。「少子高齢化が進む中、今ある建物を有効に使って税負担を抑えるべきだ」。本の電子化が進むと図書館の利用は減るとして、建て替えよりも移転に理解を示す意見もあった。

 一方、現在地での存続を求める市民は、中央公園内にある環境の魅力を支持する。中区の女性は「緑に囲まれ、小鳥のさえずりや木漏れ日の差す小道に癒やされる。周辺環境も図書館の一部」。西区の会社員男性(48)は「図書館には学びや憩いの場の機能が要る。商業施設の間借りでは役割を果たせない」とした。

 現在地には、近くにひろしま美術館など文化芸術施設が集まる。西区の会社員橋本良裕さん(71)は「自然豊かで文化が薫る一角という立地がとてもいい。商業ビル内では落ち着かない」と訴える。

 A館は駅から徒歩3分。25年度末までに歩行者専用橋でつながり、さらに便利になる。JRを利用する呉市の主婦(48)は「電車の待ち時間に立ち寄れる」と歓迎。一方、アストラムラインを利用する安佐南区の会社員女性(49)は「現在地はアストラムの駅やバスセンターから近い。移転で不便になる人もいる」と懸念する。

 中央図書館の移転を巡っては市議会から、A館を運営する市出資の第三セクターの経営支援が目的ではないかとの見方も出ている。東区の無職男性(70)は「税金を使った第三セクターの尻拭い」と批判。一方、広島県府中町の清掃作業員山本拓矢さん(52)は「テナントや近くの商業施設に好影響をもたらす可能性を考えれば、理にかなっている」とプラスにとらえる。

 駅前ビルに図書館を設けるのは、兵庫県明石市や茨城県土浦市などで先例がある。いずれもビルの一部フロアに設け、市によると、周囲と相乗効果などでにぎわいを生んでいるという。

 編集局の呼び掛けに読者からは1日で150件以上の意見が集まった。中区の無職男性(68)は「図書館は都市の知の拠点。集客だけでなく、本来の機能をどう充実させるかを一番に考えて」と訴えた。市は幅広い声に耳を傾け、将来も愛され続ける図書館の在り方を考えてほしい。(余村泰樹)


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  • 市が中央図書館を移す方針のエールエールA館。広島駅から徒歩3分とPRする

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