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オミクロン株 流入に備え万全対策を

2021/11/30 6:44

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が今月、南アフリカで確認された。重症化しやすいかどうかはまだ分からないものの感染力は非常に強いと指摘する声がある。

 岸田文雄首相はきのう、外国人の新規入国を全面禁止する措置をきょうから始めると明らかにした。感染者が確認された国からの日本人の帰国も厳格に管理する。菅義偉前政権は新型コロナ対策で「後手後手」と批判された。それを教訓として迅速な判断に踏み切ったのだろう。

 世界保健機関(WHO)は26日、最も警戒すべきランクの変異株に指定した。欧州や香港でも感染が確認され、感染拡大が危ぶまれる。

 日本でもすでに水際対策を強化していた9カ国からこれまでに32人の入国があり、うち南アの隣国のナミビアから入国した1人は陽性の疑いがあるという。オミクロン株かは不明だが、国内で広がる懸念は残る。

 オミクロン株の解析には今後数週間かかると見込まれる。新たなワクチン開発も数カ月が必要とされている。政府はそれまでは水際対策を徹底し、知見や対処法が見つかるまでの時間を稼ぐことが肝要だ。国内への流入を防ぎきれなかった場合にも備え、万全の対策を講じたい。

 感染地域から日本人が帰国する場合は当面、10日間はホテルなどに強制的に足止めされる。その後の検査で陰性が分かれば入国できるが、ホテル滞在中は厳しい管理が不可欠だ。宿泊施設や専用病棟などの確保も急がなくてはならない。

 ワクチンの2回接種者のブレークスルー感染も指摘されている。時間が稼げれば新ワクチン開発や3回目接種なども進められるだろう。

 気がかりなのは、政府が今月からコロナ感染防止のための行動制限を緩和していることだ。2回目接種を済ませた人が人口の75%を超え、国内の感染者数は大幅に減っている。通常の国民生活を取り戻す出口戦略に踏み出すことは理解できる。

 だがワクチン接種済証か検査の陰性証明を提示する「ワクチン・検査パッケージ」を活用すれば、緊急事態宣言下でも飲食店での会食やイベント参加の人数制限が撤廃される手法は危険と背中合わせだ。ウイルスが広がり始めれば爆発的感染につながりかねない。行動制限緩和は状況を十分見極めながら臨機応変に対応するしかなかろう。

 年末年始は飲食や帰省など人の移動や交流の機会は増える。空気が乾燥し、ウイルス感染が拡大しやすい時期にワクチンが間に合わないまま「第6波」が到来する危険も否定できない。

 気の緩みが心配だ。政府や自治体には、早めの注意喚起と、必要に応じて柔軟に対応を見直す判断が求められる。

 変異株はアフリカなどワクチン接種がまだ行き渡っていないところで拡大することも指摘されている。政府は国内だけでなく世界を見渡したワクチン対策にも取り組んでほしい。

 政府は今夏のピーク時と比べ3割多い約3万7千人が入院できる医療提供体制を構築する方針だ。しかしベッド数はあっても入院できない事態も起きた。オミクロン株の出現を警鐘としたい。政府はでき得る限りの準備を重ね、感染再拡大を封じ込めなければならない。 

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