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働く女性「欲張り」表現、怒り招く 広島県のハンドブック炎上、背景は【こちら編集局です】

2021/12/1 22:30
広島県作成の「働く女性応援よくばりハンドブック」。タイトルや一部の内容に批判が相次いだ

広島県作成の「働く女性応援よくばりハンドブック」。タイトルや一部の内容に批判が相次いだ

 広島県が仕事と家庭の両立を目指す女性に向けて作った冊子「働く女性応援よくばりハンドブック」が、「仕事と家庭の両立は『欲張り』なのか」などとインターネット上で批判を呼んでいる。編集局はLINE(ライン)で読者に受け止めを尋ね、ジェンダーやメディアの専門家たちと「炎上」の背景を探った。

<編集局に寄せられた「働く女性応援よくばりハンドブック」への主な意見>

 冊子は2014年度に初版を作成。県が11月27日午後、公式ツイッターで冊子を取り上げたところ「母親が働くのは女のわがままか」などの批判と共にリツイートされ「炎上」した。

 ジェンダー問題に詳しい東京工業大の治部れんげ准教授は「仕事と家庭の両立が『当たり前』になるよう支援するのが行政の仕事。欲張りとの表現は不適切だろう」と指摘。「ネット上で議論が起こる時、読み手は自分のつらい体験を思い出す。『会社で嫌みを言われた』などの経験がそれぞれにあり、怒りに結びついたのでは」と推し量る。

 編集局に寄せられた声にも「仕事に遅刻して子どもを病院に連れて行くのはいつも母親」などと、自らの大変な子育て環境と重ね合わせる意見が目立った。

 また、働く女性の心構えとして「同僚・周囲への感謝と配慮」を促すページにも異論が相次いだ。育児を「手伝う」感覚しかない「パパ」を気遣いの対象としている点について「夫が仕事のことだけを考えていられるのは誰のおかげか」などの声があった。

 単に「よくばり」の言葉だけでなく、読み手の背景に県の配慮が行き届いていなかったとの指摘もある。

 冊子の冒頭に登場するのは「子育てが一段落して再び働きたい専業主婦」という女性像だ。広島大大学院の匹田篤准教授(メディア論)は「専業主婦も労働であり、フルタイムもパートもいる。それぞれが大変な中、インターネット上で怒りのパワーが吐き出された」と分析。法政大の藤代裕之教授(ソーシャルメディア論)は県に対し「怒りの先にある多様な生活に思いをはせて」と求める。

 一方で編集局には「批判はおかしい」との意見も寄せられた。県は15年10月に作った県総合計画で「欲張り」の文言を初めて使用。父親向けの子育て支援冊子にも「よくばり」の文言があり、湯崎英彦知事は30日の記者会見で「切り取られて、女性が欲張りなんだと誤解を生んでいる。言葉自体に問題はない」と説明する。LINEには「ポジティブな言葉」「制度の詳しい情報もあり有益な冊子だ」との意見もあった。

 読者からは「(仕事と家庭の)両立の2文字が女性にばかり使われることに違和感」との意見も。広島電鉄(中区)の総務部長でキャリアコンサルタントの嶋治美帆子さん(54)は、冊子の改訂を検討する県に対し「同僚、上司、パートナーの意識改革につながるページを設けるなど、子育てしやすい環境づくりをそれぞれが『自分事』として考えられるアプローチが必要だ」と話した。(高本友子、加納亜弥)

女性の両立が「欲張り」? 広島県の冊子に批判噴出

「仕事と家庭の両立は欲張りなのか」広島県公式ツイッター炎上 働く女性向け冊子、タイトルに「よくばり」

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