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日大理事長逮捕 ワンマンなぜ許したか

2021/12/2 6:35

 日本大理事長だった田中英寿容疑者を東京地検特捜部が逮捕した。リベートとして受け取った1億2千万円を申告せず、5300万円を脱税した所得税法違反の疑いが持たれている。

 7万人の学生が在籍する国内最大規模の大学である。その経営トップが強制捜査を受けること自体、ゆゆしき事態である。田中容疑者はきのう理事長職を辞任する意向を大学側に示し認められたが、容疑は否認し続けている。

 既に医学部付属病院を巡る背任事件で、側近とされる日大の元理事と医療法人の前理事長らが起訴されている。工事費などの水増しによって、日大から前理事長側に4億2千万円が不正に渡ったとされる。

 元理事ら2人はそれぞれ田中容疑者に数千万円を渡したと供述しているという。学費や国からの助成金で支えられている大学の運営資金の一部がリベートとして田中容疑者に渡った可能性もある。事実なら大学の私物化にほかならない。

 背任事件の関係先として、家宅捜索を受けた田中容疑者の自宅からは1億円を超える現金が見つかった。ほかにも業者から多額のリベートを受け取っていた疑いも浮上している。特捜部は資金の流れなど事件の全容を徹底解明する必要がある。

 なぜ、これほどの専横が放置されてきたのだろうか。

 田中容疑者は日大相撲部で活躍し、学生横綱にも輝いた。卒業後は大学職員となり、相撲部監督として実績を上げ学内での足場を固めていった。

 スポーツ界の人脈や、100万人を超える卒業生の組織「校友会」の支持を背景に、2008年、理事長に就任した。以来、13年間にわたってトップの座に君臨してきた。

 就任当時は教職員の選挙で選ぶ「総長」が実質的なトップを務めていたが、13年に総長ポストを廃止し、影響力をさらに強めたとされる。理事や幹部の任免に絶大な権力を振るい、自らの方針に反対意見を唱える職員は人事面で冷遇したという。

 大学経営の中心に位置する理事会は、田中容疑者ら一部のメンバーが仕切っていた。利権構造を生んだのは、「ワンマン体制」の弊害ではないか。誰も逆らえず、チェックも働かないガバナンス(組織統治)の欠如は深刻と言わざるを得ない。

 3年前のアメリカンフットボール部の危険タックル問題でも、第三者委員会から「組織の機能不全を放置した」と厳しく批判された。日大の対応は今回も鈍く、背任事件の被害届も田中理事長辞任まで保留していた。体質は何も変わっていない。

 「ワンマン」の暴走を許した大学側の責任は免れない。外部の弁護士らによる第三者委員会を設けて一連の事件の経緯を検証し、公表すべきだ。けじめをつけるため、理事会刷新に踏み切ったのは当然だろう。

 日大には昨年度、90億円の私学助成金が交付され、税制上の優遇も受けている。公共性の高い存在だけに、経営の透明性が確保できなければ、社会の理解は得られない。

 文部科学省にも厳しい指導が求められる。私学の自治は尊重されるべきだが、自浄作用が機能しないようなら助成金の減額や不交付などを含め、踏み込んだ対応を検討すべきだ。

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