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3回目接種開始 混乱繰り返さぬ対応を

2021/12/3 7:01

 新型コロナウイルスワクチンの3回目接種が始まった。これまでと同様に医療従事者を先行させ、年明け以降に高齢者、そして一般へ順次本格化する。

 新たな変異株オミクロン株が見つかっている。国内の感染状況は比較的落ち着いているが、「第6波」への備えを怠るわけにはいかない。政府は着実に接種を積み上げてもらいたい。

 ワクチン接種を2回済ませていても、時間の経過とともに感染や重症化のリスクは高まる。3回目の接種は落ちてきた免疫力を再び高める有力な手だてとして欧米各国で広がっている。

 1、2回目の接種時は政府と、実際に作業を進める自治体との情報共有が十分とはいえなかった。ワクチン供給などが滞り、接種が一時的に中断される事態も起きた。政府は混乱を繰り返さないよう万全を期さなければならない。

 希望する18歳以上全員が対象だ。異なるワクチンを使う「交差接種」にも初めて取り組む。これまでの接種とルールが異なる。政府は国民に十分な情報提供と説明を尽くすべきだ。

 気になるのは2回目を受けてから原則8カ月以上の間隔を空けるとする政府の方針だ。

 海外の研究例ではワクチン効果は「5カ月で半減」「7カ月で4割減」などとされている。いつまで効果があるかは不透明だが、医学的な見地から「8カ月間」空ける根拠は薄い。

 円滑な接種の鍵を握るのはワクチンが滞りなく供給できるかどうかだ。政府がいくら接種スケジュールを示したところで自治体にワクチンが届かなければ混乱を招くだけだ。政府は早めに供給計画を示し、ワクチンの安定確保に全力を挙げる必要がある。

 医師や看護師などの人材や接種会場の確保状況は自治体間でばらつきがある。全国知事会や日本医師会は「準備が整ったところから前倒しすべきだ」と求めている。自治体の実情に合わせた柔軟な対応も求められる。

 政府は例外的に「6カ月後」の接種を認める考えだ。しかし前倒しできるのはクラスター(感染者集団)が発生した医療機関などに限っている。感染が広がった後で前倒し接種をしても予防効果は期待できないだろう。

 交差接種による副反応への懸念も根強い。政府は2回目までは同じメーカーのワクチンを使うことを推奨していた。当初予定になかった3回目だけに、政府や自治体は丁寧な情報発信に努めてほしい。

 政府は交差接種にすでに取り組んでいる海外の事例や、副反応の発生状況や抗体量の分析などを速やかに公開して不安を取り除かなくてはなるまい。

 2回の接種を終えた人は国内で75%を超えた。たださまざまな理由でワクチン接種を受けられない人もいる。無料のPCR検査の拡充なども欠かせない。

 1回目の接種が出遅れている途上国もある。先進国が3回目接種を急ぐほど、途上国への供給は減る。オミクロン株は接種の遅れるアフリカ南部で見つかった。途上国で感染が広がれば、新たな変異株の出現を後押しすることになりかねない。

 感染症対策にはグローバルな視点が欠かせない。政府は国際社会と協調し、ワクチンを各国に適切に分配する仕組みの導入に取り組む必要がある。 

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