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オミクロン株の水際対策 迷走の背景を検証せよ

2021/12/4 6:00

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の水際対策として、国土交通省が航空各社に求めていた国際線の新規予約の停止要請を取り下げた。

 要請からわずか3日での撤回である。海外の日本人駐在員や出張者たちから帰国できなくなるとの声が相次ぎ、方針転換を迫られたという。

 水際対策が重要であることは言うまでもない。しかしいきなりの新規予約停止が帰国を望む人たちにどんな影響をもたらすかは、想定できたはずである。

 なぜ場当たり的な対応になったのか。今後に備えるためにも、意思決定のプロセスなどを含め、しっかり検証すべきだ。

 今回の停止要請は、国土交通省の航空局による「勇み足」だった。官邸や斉藤鉄夫国交相には事後報告だったという。岸田文雄首相は「一部の方に混乱を招いた」として陳謝した。

 しかし混乱の責任は国交省だけにあるのだろうか。

 オミクロン株感染が拡大した11月末、関係閣僚が協議し、全世界から外国人の新規入国を禁止する水際対策が決まった。その中に「12月1日以降は到着便の新規予約を抑制する」との文言があり、国交省の航空局が、航空各社への新規予約の一律停止の要請に踏み切ったという。

 岸田首相はコロナ対策のスピードを重視している。前政権のコロナ対応が「後手後手に回っている」と批判されたことへの反省からだろう。オミクロン株に対しても矢継ぎ早に政策を打ち出している。そうした姿勢に航空局が同調し、拙速になったといえるのではないか。

 斉藤国交相は「荒っぽい方針」と不快感を口にしていたが、官邸と国交省の意思疎通のまずさは否めない。このような事態は、官邸の司令塔機能に疑問符が付きかねない。

 航空各社に内々で要請したことも問題を大きくしたようだ。12月はクリスマス休暇もあって、すでに航空便には多くの予約が入っている。新規予約を停止しても影響は大きくないと見誤ったのだろう。国交省はコロナ禍で既に航空会社へ減便要請などを繰り返しており、担当者は「今回も航空会社への事務連絡の一環」と考え、官邸に伝えていなかったという。

 水際対策には、国交省はもちろん、出入国管理を担う法務省や外務省、厚生労働省など多くの機関が連携して取り組まねばならない。

 憲法が保障する「移動の自由」を制限することにもつながりかねない。そうした重大な政策について朝令暮改が繰り返されれば、大きな混乱を招くのは明らかだ。首相の統治能力が問われよう。

 政府はすでに、全世界を対象に外国人の入国禁止に踏み切っている。これに対しても世界保健機関(WHO)当局者が「論理的ではない」と批判したほか、差別的だとの声も国内外で上がっている。ウイルスは国籍や人種を選ばない。感染対策と人権尊重のバランスも冷静に考えなくてはならない。

 なぜこうした厳しい対策が必要なのか。感染者が国内へ入るのを減らしたり遅らせたりすることで、どんな対応が見込めるのか―。明後日、臨時国会が召集される。首相は今回の迷走の原因も含め、国民が納得できるよう説明すべきである。 

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