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議員が「お年玉付き」違法? 年賀はがき、よく見ると寄付行為かも…【こちら編集局です】

2022/1/8 23:07
広島市議が選挙区内の有権者に送ったお年玉付き年賀はがき(画像の一部を修整しています)

広島市議が選挙区内の有権者に送ったお年玉付き年賀はがき(画像の一部を修整しています)

 「広島市議会の議員が選挙区内の有権者にお年玉付き年賀はがきを送った。問題はないのか」―。市民から疑問の声が編集局に届いた。公選法は、選挙区内の有権者に年賀状などのあいさつ状を出すことを原則禁止し、金銭や物品の寄付も禁じている。政治家と有権者のクリーンな関係を保つためだが、市議の行為に違法性はないのだろうか。市選管や総務省、専門家の見解を聞いた。

 情報を受けて5日、記者が市議の事務所を訪ねた。市議会の中でも当選回数が多いベテラン議員。抽せんで現金や切手シートが当たるお年玉付き年賀はがきを送ったと認めた上で「毎年送り、問題を指摘されたことはない。違法とは考えていない」と首をかしげた。

 出した年賀はがきは約1万枚。このうち半分程度を選挙区内に郵送した。「市政報告 賀正」とのタイトルで、市が進める事業に対する自身の見解や新年互礼会の中止などを知らせる内容だ。「年賀はがきなら元日に届いて正月休みに目を通してもらえる。くじ付きだから選んでいるわけではない」と市議。文面は事前に弁護士に見せ、公選法が禁じる「あいさつ状」に当たらないと言われたという。

 市選管は、内容が「明けましておめでとうございます」などの時節のあいさつだけの場合は、公選法が禁止するあいさつ状に当たるとする。ただ、あいさつや市政報告などが混在した内容の場合は、違法に当たるかどうかを判断する明確な線引きはないという。市選管は「司法が個別に判断することになる」と話す。

 ▽文面を個別審査

 一方、お年玉付き年賀はがきを使っている点はどうなのか。公選法は政治家が選挙区内で寄付することを禁じている。市選管によると、同法が禁じる「財産上の利益供与・交付」に該当する可能性があるという。「違法ではないとは言い切れない。事前に問い合わせを受ければ、使わない方がいいと説明する」とした。

 総務省選挙課は「ただちに寄付には該当しない。くじで当せんするかは、差出人の意思とは無関係に決まるため、寄付と認めるのは困難」との見方だ。見解が違って分かりづらいが、政治家がお年玉付き年賀はがきを選挙区内に出した場合、違法になるかどうかは文面などを個別に審査して判断するしかないようだ。

 取材を進めると、別のベテラン市議もお年玉付き年賀はがき約1500枚を選挙区内外の個人や企業に送っていた。年4回ある市議会定例会が終わるたび、はがきで「市政報告」を出しており、「普段は通常のはがきを使い、年始の報告では、たまたまお年玉が付いているだけ。違法との認識はない」と説明した。

 ▽故意と判断 困難

 2人の市議は数十年にわたりこうした年賀はがきを送ってきたといい「法に抵触するとはっきりすれば使わない」と話した。同様のことをしている市議は他にもいるとも語った。

 「当せんするとは限らないお年玉付き年賀はがきの郵送を故意の利益供与とは認定できない。公選法違反と判断するのは難しい」。同法に詳しい神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)はこう指摘した上で提案する。「市政報告は通常のはがきでも可能だ。少しでも違法と疑念を抱かれるよりは、使用を避けた方が無難ではないか」(新山創、余村泰樹)

 <クリック>政治家のあいさつ状や寄付を巡る公選法の規定 147条は、政治家が選挙区内の有権者に年賀状などのあいさつ状を出すことを禁じている(答礼のための自筆のものを除く)。1989年の法改正で定められ、資金力のある政治家の売名行為を防ぐ狙いがある。罰則はない。一方、199条は政治家による選挙区内での寄付を禁止。「金銭、物品その他の財産上の利益供与・交付」が対象で、違反すると1年以下の禁錮か30万円以下の罰金などが科せられる。

この記事の写真

  • 年賀はがきの裏面には、サッカースタジアム建設など市の取り組みに対する見解を「市政報告」として載せている(画像の一部を修整しています)

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